コラム集 神経眼科学会に参加しました 2011.12
11月25日から27日まで第49回神経眼科学会が神戸国際会議場で開催され、参加してきました。 前年の臨床眼科学会同様に休診しないように診療の合間を縫っての参加です。神経眼科専門のこぢんまりとした学会なのですが、活発な討論が行われておりました。今回の主催は兵庫医大眼科学教室で学会長は三村教授です。 三村先生は神経眼科の大家で、当院の眼瞼痙攣や眼球運動障害を持つ患者さんも数多く診察・治療を行っていただいています。
今回の学会でのトピックとしては視神経炎の治療に関してです。 以前のコラムでお話ししたように今の治療はEBM(evidence-based medicine,証拠に基づく治療)に沿って行われております。 視神経炎に関しても1990年代にランダム化比較試験を行った結果、これまで有効と考えられていた治療をしてもしなくても予後(視力などの視機能が回復するかどうか)は変わらないということになりました。 つまり何もしなくても、一生懸命治療を受けていただいていても結果は同じということが示されてしまいました。 ただ、もともと視機能の回復が比較的良好な疾患だったのですが、ごく一部の患者さんではどんどん視力が低下してそのまま回復しない不幸な転帰をとる方がいらっしゃいました。 なぜそうなるかはよくわかりませんでしたし、もちろんランダム化比較試験がその答えを教えてくれるわけではありませんでした。
最近、ある特別な抗体(抗アクアポリン4抗体)陽性の患者さんに起こる視神経炎が、回復しにくいたちの悪い視神経炎であることがわかってきました。 つまり、不幸な転帰をとる方のかなりの部分がこのタイプの視神経炎ではないかと考えられるようになってきました。さらにこの視神経炎ではこれまでの治療法とは違う治療を行わないと進行や再発を食い止められないし、逆に今まであまり選択肢として考えていなかった治療を行えば進行を食い止められるかもしれないということになってきています。
何を言いたいのかと思われる方も多いと思います。新しい知見が出てくるとこれまで認められてきたEBMが必ずしも正しくなくなってしまう、あるいはそれを当てはめることが出来なくなるということが起こりえるということです。 最新の知見をしっかり診療に取り入れていくことを改めて肝に銘じた学会となりました。