オーダーメード治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集  OCT黄斑円孔 2011.06

          

黄斑円孔とは図1のように文字通り黄斑に丸い穴が開いてしまう病気です。前回のコラムでご紹介した偽黄斑円孔とは違い本当にフィルムの真ん中に穴が開いてしまうため、 視力低下や見たいところが見えない感じ(中心暗点)を自覚します。原因としては、眼の打撲などの強い衝撃でおこる外傷性などもありますが、 老化に伴いおこる特発性が圧倒的に多いです。ただ、これも老化だからといってもちろん皆さんにおこるわけではありません。

以前は原因がよくわかっていなかったのですが、OCTなどの検査法の発達により後部硝子体膜剥離という老化現象が関係していることがわかってきました。 眼の中はゼリーのような硝子体という組織があり、眼の形を保つ役割を持っています(図2)。後部硝子体膜とはこの硝子体と網膜を隔てている薄い透明な膜です。硝子体が老化でだんだんさらさらになってくると、この膜が網膜から離れてきます。これを後部硝子体膜剥離といい、誰にでもおこるふつうの老化現象です。 図3矢印のように通常のOCT検査でも見えることがあります。 ところが、この膜が黄斑部で網膜と癒着しており、黄斑部から離れるときに網膜を引っ張って穴を開けてしまうことがまれに起こります。 これが黄斑円孔が出来てしまう原因です。OCTで見てみても網膜全層にぽっこりと穴が開いてしまっています。(図4)

  

放っておいても自然に治る病気ではなく、時に網膜剥離につながることがある病気でもあるため手術で円孔を閉鎖する処置を行います。 術後数日間うつむき続けてもらう必要があるのですが、今では閉鎖率も格段に向上し視力回復や中心暗点の消失を望めるところまで治療法が発達してきました。 図5は別の方の黄斑円孔の術後の写真です。層構造の乱れは残っていますが、円孔は閉鎖されていて視力も著名に改善しました。発症早期の黄斑円孔は手術の良い適応と考えられています。

OCTは本当の黄斑円孔なのか、偽黄斑円孔なのか、あるいは網膜のどの層の深さまで穴が開いているのかなどを診断するのに役立っています。