コラム集 ジェネリック調べてみました2 2010.12
2008年4月から医師だけでなく患者さんが希望されれば先発品ではなくジェネリック医薬品を選択できるようになりました。 それ以前は、実績があり 先発品と同等であると私たちが確信できるジェネリックの中からいくつかを当院から指定して処方しておりました。 しかし、これからは処方したことのないジェネリックを使用される患者さんがいらっしゃることをふまえ、 使用感はどうか、先発品からの切り替えで何か問題が起こらなかったかなどを、スタッフに協力してもらい調べていました。 昨年6月に第一回の報告を行いましたが、これは過去のコラム集「ジェネリック調べてみました」をご覧ください。施行後約2年半経った現在では、患者さんご本人が薬局でジェネリックを希望され処方を受けた方は、計1500人以上いらっしゃいました。最初の一年で400名あまりの方々であったことを考えると、ジェネリックが皆さんに認知されるようになり、ジェネリックを希望される患者さんがだんだん増えてきていることがわかります。
今回のコラムはキサラタンという緑内障点眼薬のジェネリックに関してです。この薬は緑内障点眼薬の中で最も多く使用されており、市場規模も大きく20社以上からジェネリックが販売されました。日本では先発品と主成分が同じ濃度で、生物学的同等性が担保されればジェネリックとして認可されます。そのため添加物・防腐剤など主成分以外の成分がそれぞれのジェネリックで異なります。キサラタンは開封前冷蔵保存だったり、防腐剤の濃度が通常の目薬より少し高かったりといった特徴があります。これに対して、常温保存を可能にしたり、防腐剤の濃度を下げたりできるよう成分調整した物も数多く販売されています。すべてのジェネリックがお互いに少しずつ(あるいはそれなりに)異なっているのが現状です。
私は隣接する調剤薬局さんにはあるメーカーのジェネリック一つだけに限定して置いていただくようにしました。そのメーカーを選んだ理由はとにかくキサラタンに一番近い物ということです。キサラタンを開発するときに防腐剤や保存法の問題を始めあらゆることが検討課題になったはずですし、可能であれば低濃度の添加物で常温保存できるものが製品化されたはずです。それでも今の内容で発売されたと言うことは何らかの理由や背景があったに違いなく、それを変更したジェネリックを同等品として考えるのに私の中で抵抗があったからです。
ジェネリックは5月下旬から一斉発売されました。当院ではこの半年で100名弱の方々が、ジェネリックを希望されましたが、先発品のままを希望される方々のほうが多数派でした。ジェネリック使用の方の中で、明らかに効きが弱いと感じた方が2名、ジェネリックの方が効いているのではないかと感じた方が2名いらっしゃいました。結果として、少なくとも私が選択したジェネリックはキサラタンとほとんど同等であるというのが私の印象です。
ところが、最初の3ヶ月ぐらいはこのジェネリックの評判はあまりよくありませんでした。というのは点眼しようとするとぼとぼと落ちてしまい、すぐになくなってしまうというのです。これではジェネリックのメリットがなくなってしまいますし、まぶたにつくと色素沈着することがあるという副作用がキサラタン以上に問題になってしまう可能性があります。20名以上の方がキサラタンに戻すことを希望されましたが、さし心地などの問題でキサラタンに戻した方はほとんどいらっしゃらず、ほぼ全員が上記の理由による物でした。薬局さんの点眼指導の徹底などで最近は変更を希望する方は少なくなってきていますが、点眼ボトルの性能など中身以外のところでもいろいろなノウハウがあるのだなと変なところで感心してしまいました。ちなみに、改善要求を早い時期から出しているのですがまだ実現されていないようです(もうすぐ改善できる予定ですとはメーカーの方はおっしゃってますが・・・)。
かつて、ジェネリックは品質にばらつきがあり、ひどいのになると錠剤が胃や腸の中で溶けることなくそのままの形で便に出てきたこともあったようです。これではいけないということでその後いろいろな変遷を経て今の基準を満たすことが必須となりました。それでもこれまでお話ししましたように、同じジェネリックでもメーカーが違えば、細かなところが異なっています。以前ほどは効果のばらつきはないとは思いますが、ジェネリックを使うときは主治医の先生とよく相談し、信頼できる製品を使うことをお勧めします。