オーダーメード治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集 新緑内障点眼薬 2014.12

日本で開発され世界に先駆けて全く新しい作用機序を持つ緑内障点眼薬が発売され使用できるようになりました。 Rhoキナーゼ阻害薬の「グラナテック」という製品名で1日2回の点眼です。 これまでに製品化された緑内障点眼薬の作用機序ごとに分類したものは、2012年9月のコラム「緑内障点眼薬」に載せていますので参考にしていただければと思います。

緑内障治療の原則は眼圧を下げるということです。眼圧は房水という目の中に溜まっている液の量で調節されています。 房水は角膜と水晶体の間の前房というスペースでおもに循環していて、各組織に栄養素を運んでいます(図1)。 房水の量が多いとボールに空気がたくさん入っている状態のようになり、眼圧が上がってしまいます。 逆に少なすぎると空気が抜けたボールのように張りがなくなってしまいます。どちらも眼にとって好ましくないので、適切な圧力に調節する機能が備わっています。 房水は毛様体で作られ、隅角から排出されます。図2はその流れを矢印で示したものです。

眼圧を下げるには房水の作られる量を減らすか、排出を促進するかのどちらかが基本となります。 房水産生を抑える点眼薬としては、β阻害薬や炭酸脱水素酵素阻害薬などがあり、排出を促進する点眼薬としてはプロスタグランジン系薬が代表的です。 Rhoキナーゼ阻害薬は後者に属しますが、作用機序がこれまでのものと全く異なるので、これらの点眼薬に追加しても相加効果が期待できるのです。

試用品を提供していただいたので私を含め医院の有志でさしてみました。 しみたり、異物感があったりすることはほとんどなく、さしごこちは悪くなかったのですが、10分ぐらいたつとかなり充血していました。 数時間で消失したのですがこれはさした人みんなにおこりました。添付文書を見ても60%以上の方に同様の症状が起こったようです。 もともと血管拡張作用のある薬だそうで、やむを得ない部分もありそうですが、緑内障治療の新たな選択枝として期待しています。