オーダーメード治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集  緑内障点眼薬 2012.9

緑内障治療薬は私が医師になった頃よりも種類が多くなり、効きも良くなりました。まれに内服薬を用いることはありますが、基本は点眼薬による治療です。 ただ、眼精疲労やドライアイの目薬のように眼の安らぎを求めるものではなく、目の表面にストレスをかけてでも眼圧を下げることを目的にしているため、どの目薬も基本的にさし心地はあまり良くないです。

最近、これまでのものに加えてα2作動薬という新しいタイプの緑内障点眼薬が発売になりました。 これまでは大きく分けて4タイプの目薬が使われてきました。それらの主なものを挙げておきます。

1 プロスタグランジン(PG)系薬

     キサラタン

     トラバタンズ

     ルミガン

     タプロス

     レスキュラ

2 β阻害薬

     チモプトール(チモプトールXE)

     ミケラン(ミケランLA)

     ミロル

     ベトプティック

     ハイパジール

3 炭酸脱水素酵素阻害薬(CAI)

     エイゾプト

     トルソプト

4 α1阻害薬

     デタントール

などです。

PG系薬は一般的には一番眼圧下降作用が強いと言われています。 全身的にも副作用が少なくそういう意味では使いやすい薬なのですが、眼局所の副作用がほかのタイプに比べて高い頻度で出現してしまいます。 点眼時の刺激感、充血、まぶたの色素沈着、まつ毛が太く多くなる(これは喜ばれる方もいらっしゃいますが・・・)、角膜上皮障害などです。 程度が強いと充血とまぶたの色素沈着は見た目にかなり影響し、結膜炎にかかってしまっているように見えたり疲れているかのような印象を与えてしまったりします。 そうなると効果があっても使用継続を断念せざるを得ないこともあります。最近では、眼が落ちこんだいわゆる「奧眼になる」という副作用も報告されています。

β阻害薬はもともと高血圧の治療薬として使われてきたものです。これが眼圧も下げることがわかったので目薬として製剤化されました。 眼局所の副作用はやはり角膜上皮障害が多いのですが、この薬は不整脈などの循環器疾患、喘息などの呼吸器疾患のある方が使うとこれらによる症状が悪化することがあるので注意が必要です。

CAIは利尿剤として使われてきたものです。内服だと脱水させて眼圧を下げる効果は高いのですが全身的に影響が及ぶため、点眼薬が開発されて今は主にこれを用いています。 効果としては上2つのタイプより若干劣る印象はありますが、点眼なら全身的に副作用を起こすことがほとんどなく比較的安心して使える目薬です。 ただ、少し粘度があるためさし心地があまり良くなく、充血したり、しばらくかすんだり、さし残しがまつげについたままだと乾燥して白くこびりついたりすることがあります。

α1阻害薬は比較的副作用の少ない薬ではあるのですが、効果があまり強くありません。 そのためほかのタイプが使えない方や追加での効果を期待する場合に用います。

さて、新しくでた点眼薬ですが α2作動薬というタイプのアイファガンという薬です。 先ほどからαやβが登場していますが、これは交感神経にある受容体のタイプを示しています。 交感神経は興奮、緊張、運動するときに活動し、その活動の程度はこれらの受容体の相互作用によりコントロールされています。 阻害薬はその受容体をブロックして働かなくする作用、作動薬は受容体にくっついてその働きを強める作用を持っています。 阻害薬と作動薬という反対の作用でどうして両方とも眼圧が下がるのか?というご質問もあると思いますがちょっと複雑なので今回は省略します。

この薬はβ阻害薬と同等の効果が期待できると言うことになっています。 これまでの薬の中にも眼圧下降効果だけではなく血流改善による治療効果をうたっているものもありましたが、この薬は神経保護作用があるのではないかという期待が持たれています。 まだ発売されたばかりなのでその真偽ははっきりしていませんが今後の検証が期待されます。この薬はβ阻害薬とは違い、全身的にも比較的安全に使えます。 ただ、頭がぼーっとして眠くなることがまれに起こるようです。 また、さし心地は私が数回試した程度ではそんなに悪くなかったのですが、どうも数ヶ月続けていただくとアレルギー症状が出る方がほかの点眼薬と比べて多いようです。 当院で処方した方の中にもこのような症状が出た方がいらっしゃいました。調子がおかしければ早めに是非教えてください。

この薬はほかの薬で効果不十分の方、ほかの薬が副作用などで使用できない方に処方するという位置づけになっています。 まず使ってみるというファーストラインの薬ではないのですが期待の新薬です。