オーダーメード治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集 結膜弛緩症 2014.10

結膜は瞼結膜と球結膜があります。瞼結膜はまぶたの裏側にあり、球結膜は白目(強膜)の上にある半透明の薄い膜です。 目の表面のメンテナンスをしたり、目の中にゴミや細菌が侵入しないように防いでくれる大切な組織です。 若い時は肌と同じで張りがあるためその表面はなめらかなのですが、年齢が上がるにつれ、 以前のコラムで紹介した瞼裂斑のような凹凸ができたり、結膜がたるんでしわができやすくなったりします。 アレルギー性結膜炎などで目を強くこする習慣のある方や、コンタクトレンズなどの異物で慢性的に刺激されると若い方でも起こることがあります。

図1は軽い瞼裂斑(白矢印)はありますが、結膜弛緩症はありません。図2は軽い結膜弛緩症の例です。 目頭側の写真ですが、白の縁取り矢印で示している部分がたるんでしわになっている球結膜です。 瞼の真ん中あたりにある線状の部分もわずかですが弛緩しています。図2とは別の例ですが、図3は涙を緑色の蛍光色素で染めてみた写真です。 青色光を当てていて、緑色に見えるところが涙が溜まっているところです。上下まぶたの縁に涙が溜まっているのがわかります(白矢印)。 写真右側が目頭なのですが、結膜の弛みがあるため緑色が筋状になってさらに凹凸があるため一部色むらができています(黒矢印)。 このように目頭あるいは目じり側に出ることが多いのですが、あまりひどくなると図4のようにした眼瞼のふち全体にたるんだ結膜が乗っかっているような状態になります。 一見弛緩が強くないように見える方でも、強く目を閉じてパッと目を開けてもらうと図4のような状態に一時的になる方もいらっしゃいます。

このような結膜弛緩症ですが、基本的には老化現象の1つなので症状がなければ何もする必要がありません。 弛緩する場所と程度によってはいくつか不愉快な症状が出ることがあります。

1.反復性結膜下出血

以前のコラムで紹介した結膜下出血が繰り返し起こる状態です。 まばたきしたり、きょろきょろ目を動かすと、どうしてもしわになっている結膜の血管にストレスがかかり出血しやすくなるのです。 病気として心配していただかなくてもいいのですが、程度によっては白目がべったり赤くなるので気にされる方も結構いらっしゃいます。

2.涙点閉塞による流涙

これは図2のように目頭側の弛緩が強いとおこりやすくなります。 図2白塗りつぶし矢印のところに涙点という目の表面に溜まった涙を流しだす排水口に当たる組織があります。 ここを弛緩した結膜が塞いでしまうと涙が溜まったままになり流涙の原因となります。

3.ドライアイ様の症状(詳しくはコラム「ドライアイ」をご覧ください)

目の表面にしわによる凹凸があると涙を均一に配ることができず乾燥して荒れてしまうところや、 逆に涙がずっと溜まり続けるためうるんだままのところができやすくなります。 ドライアイの場合はまばたきして目の表面がリフレッシュすると症状が軽くなるのですが、 弛緩が原因の場合ではまばたきをすることでかえってこすれてしまいあまり良くならないこともあるのです。

治療は眼表面のコンディションを改善するためにまずは目薬を使います。 人工涙液、抗炎症薬などドライアイで使用する点眼液を結膜弛緩症でも使用します。 これで症状がなんとかおさまってくれるならいいのですが、それでも不快な症状が続くようであれば手術治療を考慮します。 原因がたるんだ結膜にあるわけですから、たるんだ結膜を切除して目の表面の凹凸をなくすことで根本的な解決を目指します。