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コラム集 流涙症 2022.01

涙は眼球の外上方にある涙腺(下図)から分泌され目の表面を潤します。 まばたきは目の表面に涙をまんべんなく配る役目と、目頭側の上下にある涙点(下図)に涙を集めそこから鼻のほうに排出し、あふれないようにする役目があります。 流涙症は涙目ともいい、まぶたから涙があふれてしまう症状です。 悲しい時に涙があふれるのは病気ではなく生理的なもので、鼻のほうにもたくさん排出されるので鼻水として感じることもあります。

日常生活で慢性的に起こる流涙症で多いのが加齢によるものです。 まばたきの能力が低下したり、結膜がたるんでしわになり、うまく涙がぬぐえない状況(結膜弛緩症)になったりしたときに起こりやすくなります。 弛緩した結膜を切除するなどの治療を行うことがありますが、加齢によるものなので効果が限定的な場合があります。

涙は涙点から涙小管~涙嚢~鼻涙管を通って鼻に流れていきます(下図)。これを涙道と呼んでいます。 涙道のどこかがふさがってしまっても流涙症が起こります。この涙道閉塞は先天性に起こることも珍しくはありません。 1歳までに90%、2歳までに95%が自然に治るとされています。 そのため、以前は涙道閉塞を解除するためにブジーという医療用の針金で治療していましたが、それ以外の症状がなければまずは経過を見るという方針がとられています。

後天性の涙道閉塞は加齢性の変化や、涙道の慢性的な炎症などが原因でおこることがほとんどで、点眼薬で改善することはありません。 涙道内視鏡などの専門検査ができる施設で診察を受けていただいて治療方針を決定します。 多くの場合、涙道にシリコン性の涙管チューブを留置してておいてしばらく放置し、閉塞が解放される頃を見計らって(約2か月間)抜去します。 ただ、これでも再閉塞してしまう症例や涙道そのもののダメージが強すぎる症例では涙嚢鼻腔吻合術を行います。 文字通り涙嚢(下図)と鼻腔を隔てている薄い骨を除去し新しい涙の通り道を作成する手術です。