テーラーメイド治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集 成人中途失明原因統計 2018.04

成人中途失明原因別の統計が発表されました。それによると

1991年の統計では

1  糖尿病網膜症 (18.3%)

2 白内障(15.6%)

3 緑内障(14.5%)

4 網膜色素変性症(12,2%)

5 高度近視(10.7%)


2006年の統計では

1 緑内障(20.7%)

2 糖尿病網膜症(19.0%)

3 網膜色素変性症(13.7%)

4 黄斑変性症(9.1%)


2016年の統計では

1 緑内障(28.6%)

2 網膜色素変性症(14.0%)

3 糖尿病網膜症(12.8%)

4 黄斑変性(8.0%)

5 網脈絡膜萎縮(4.9%)


この調査は成人の中途失明患者さんの割合を示したもので、患者数の増減は触れていませんが、平均寿命が長くなるにつれて患者総数は増えていると考えられます。


これらの統計を見比べて特徴的なことは

1 1991年では白内障が失明原因として上位を占めていた

2 糖尿病網膜症が2016年で割合が減少している

3 緑内障が徐々に割合を増やしている ことだと思います。


私が医師になった頃の1991年では、片目だけの白内障手術で1週間入院することも普通でした。 手術時間も長く、手術創も大きく、視力回復するにも日にちがかかりました。 これら入院・手術費用に加え、人工レンズに健康保険が適用されず自費負担を強いられていました。 そのため視力が著しく低下しても手術を受ける機会を得られず社会的失明(0.1以下)でも我慢しておられる方がいらっしゃいました。 それがこの統計に反映されているのだと思います。


糖尿病網膜症患者さんの割合が減少しているのは、早期発見早期治療の重要性が患者さんにも内科医にも浸透してきたことがあります。 それに加え網膜症の治療法が進歩し、失明に至らずに視機能を維持できている患者さんは確実に増えています。 ただ、平均寿命と糖尿病患者さんの平均死亡年齢との差は男で8.2歳、女で11.2歳あるそうです。 単純に両者を比較することはできませんが、ご高齢になるほど糖尿病患者さんが少なくなり、それが割合の低下の一因になっているかもしれません。


問題は、緑内障患者さんの割合が少しずつ増えていることです。 網膜色素変性症は今でも残念ながら治療方法が確立されていません。 そのためどの調査でもほぼ同じ割合を占めているのだと思います。 その一方で、病気に対する啓蒙活動も治療法も進んできているにもかかわらず、緑内障患者割合は確実に割合が増えています。 1991年ごろの緑内障治療と今の治療を比較しても格段に進歩しているのは間違いありません。 私自身も以前に比べ視機能を維持できている患者さんが増えていることを実感しています。 どうしてなのか私にはよくわかりませんが、 緑内障の診断基準から眼圧が高いという項目が除外され、正常眼圧緑内障が全体の半分以上を占めるようになったことも一因なのかもしれません。 以前ならこれらの患者さんは視神経萎縮など緑内障以外の病気として分類されていたのかもしれません。 あくまでも私の推測です。いずれにせよ、緑内障治療の最前線にいる私としては気を引き締めて治療に専念しないといけないと考えさせられた統計でした。