コラム集 酒とタバコと緑内障 2022.10
緑内障の治療として確立しているのは眼圧を下げることだけです。 ただ、日本人には欧米人と違い正常眼圧緑内障が多く、眼圧以外の別の原因があるのではないかといわれています。 その仮説のなかで有力なものの一つが血管、血流障害です。 視神経に栄養や酸素を十分に供給できない環境だと、慢性的にゆっくりと視神経障害が進行するというものです。
アルコールの飲用は短期的には飲む量に依存して眼圧を下げてくれます。 飲むと顔が赤くなるように末梢血管も拡張するので、視神経の血流も増加します。 いいことずくめで、「まさに酒は百薬の長です」というわけには残念ながらいきません。 アルコール飲用はいろんな臓器の慢性疾患にかかわっていて、世界的には死亡や障害の7番目の要因になっているそうです。 慢性的な飲用では眼圧が上昇するという報告もあるのですが、これについては一致した見解には至っていません。 慢性的な飲酒を定量的・定性的に分析するのはなかなか難しいためです。 ただ、最近これまで出た報告を多数集めて分析した結果、習慣的な飲酒は少しではあるものの眼圧が高くなる傾向があるという結果が出ました。
タバコはいいことが一つもありません。 血流障害や酸化ストレスがかかってしまい、眼科的には白内障、黄斑変性症、虚血性視神経症の発症率が上がります。 では緑内障に関してはどうでしょうか? 血管、血流障害の原因になるため、明らかに視神経障害を起こしそうですが、これまでの臨床研究ではその関連をなかなか確定できいません。 最近出た報告は、「開放隅角緑内障患者がヘビースモーカーだと視野障害の進行が早くなる」というものです。 これは喫煙者が緑内障になりやすいかどうかではなくて、緑内障患者さんが喫煙していると病状の進行に影響があるかどうかということです。 やはり緑内障に限らずまず禁煙することが大切です。