オーダーメード治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集 スギ花粉症と舌下免疫療法 2015.04

花粉症は全身的にいろいろな症状が出ますが、眼科的には花粉がアレルギーのもとになるアレルギー性眼瞼結膜炎のことです。 スギ花粉症は当たり前の話ですがスギが生えている地域にしかありません。 そのため北海道の北側かなりのエリアと沖縄にはスギ花粉症で苦しんでいる方はほとんどいらっしゃいません。 では花粉症そのものがないのかというとそういうわけではないようで、北海道では白樺花粉症などがあります。

花粉症は、枯草熱といわれる病気が牧草であるイネ科植物の花粉であることがイギリスで報告されたのが始まりです。 花粉症自体は世界中にあるようで、日本ではスギ以外にもヒノキ、ブタクサなどある程度花粉の飛散量が多い植物では花粉症が起こることがあります。 花粉という異物を排除しようとするための免疫機能が過剰に反応してしまい、目の症状としてはかゆみ・目ヤニ・涙・瞼の腫れなどが生じてしまいます。 これら不快な症状に対しては、ステロイドをはじめとする抗アレルギー点眼薬などを用いた対症療法が主体です。 対症療法もいろいろな薬が登場し、以前に比べると症状を軽くできるようになりましたが、根本的に治療しようとすると減感作療法という治療になります。

これまでの減感作療法はスギ花粉エキスを皮下注射することで、過剰に反応する免疫機構を徐々に慣らしていくことを目的にしています。 低濃度から何か月~何年もかけて徐々に濃度を濃くして皮下注射することで、スギ花粉に対する過敏性を抑えて花粉の飛散する時期に不快な症状が出ないようにすることです。 ただ、注射を受けるため通院しなければなりませんし、注射の痛みにも耐えないといけません。 さらに、アナフィラキシーショックという命にかかわる可能性のある副作用がまれにではありますがおこります。

そこで開発され昨年から保険適応になったのが、舌下免疫療法です。 スギ花粉エキスを最初は1日1回舌下に含みそれを継続します。 局所的にエキスが作用するのでアナフィラキシーショックという全身性の副作用が皮下注射より起こりにくいとされ、何より自宅で加療することができます。 ただ、自宅だと体に変調をきたしたとき対応が遅れる可能性はあります。 この治療法でスギ花粉症患者さんの2割がすっかり良くなり、7割の方は症状が軽くなったそうです。 この治療法はアレルギーの専門医が行うことになっており、申し訳ありませんが当院では行っておりません。

スギ花粉症もその不快な症状あるいは眠気などの薬の副作用で活動性が低下したり、対症療法の治療費がかかるなど、社会的・経済的な損失もばかになりません。 舌下免疫療法の治療効果がさらに向上し、副作用が低減されることを期待しています。