オーダーメード治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集 第68回臨床眼科学会に参加してきました 2014.11

11月13日から16日にかけて神戸で臨床眼科学会が行われました。4年ぶりの神戸での開催で前回に続き今回も診療の合間をぬって参加してきました。 やはり学会のアカデミックな雰囲気はいいものですし、いろいろな方とお会いしたりお話を伺えたりできる貴重な機会でもあります。 眼科の学会としては国内最大のものの1つで、眼科に関するあらゆるテーマでたくさんの発表・討論が行われました。 やはりiPS細胞を用いた網膜色素上皮移殖に関する講演が大変な注目を集めていました。 この神戸で世界初の治療が行われ情報発信されていることを本当にうれしく思います。

今回の学会では、光干渉断層計(OCT)をはじめとする画像診断技術がさらに進化しているのだなということが一番印象に残りました。 当院もOCTはすでに導入しており、診断・治療に活躍しています。詳しくはコラム集のOCT関連の項をご覧ください。 網膜・黄斑部疾患では網膜や網膜色素上皮層に加えてさらにその後ろにある脈絡膜の細かな観察ができるようになってきました。 黄斑変性症では脈絡膜からの新生血管がその病態・治療効果の判定に深くかかわっているため、とても意義深いものです。

緑内障関連でいえば、OCTで神経線維層の厚みを計測することで、視野に変化が出る前に病気を発見しようという画像診断の試みが行われています。 緑内障では眼圧を下げるという以外に確立された治療法がありません。 緑内障点眼薬は、目の表面や眼瞼にストレスをかけてでも眼圧下降を図るのが目的なのでさしごこちはどの点眼薬もあまりよくはありません。 さらに充血やまぶたの色素沈着など見た目に変化が出てくることも少なくなく、ささないですむならそれにこしたことはないのです。この画像診断の信頼性は、 視野も正常で何の自覚症状もない患者さんを説得して治療を開始させていただく根拠にできるほどにはまだ至っていないと思います。 そこに達するにはもう少し時間がかかるかなというのが今の私の印象です。

緑内障でのもう一つの話題は数年前に日本で認可されたチューブシャント手術の術後成績に関するものです。 これまでの手術法に比べ成績がとてもいいというわけにはいかないですが、まずまずだとおもいます。 後は術後長期にわたって安定した効果を持続できるかどうかがポイントになりそうです。

最後に、これまでの薬とは全く違うメカニズムで眼圧を下げる緑内障点眼薬が日本で開発されこの冬に販売されることがアナウンスされました。 治療の選択枝がまた一つ増えることになりそうで、発売され次第このコラムで取り上げようと思います。