コラム集 臨床眼科学会に参加しました 2010.11
11月11日から14日にかけて神戸で臨床眼科学会が開催され、それに参加してきました。この学会は眼科では国内最大の学会で眼科に関係するあらゆるテーマで発表や討論が行われます。
「診療所に行ってみたら臨時休診だった」ということができるだけないようにと心がけているため、遠方の学会にはなかなか参加できませんでした。今回は神戸ということで診療に支障がない範囲で参加してきました。発表を聴講することに加え、同級生や先輩あるいは恩師などとお会いして話をする機会が得られて大変充実したひとときを過ごすことができました。
私の専門分野の一つである緑内障では、これまでの視野、眼圧測定などに加え画像診断で早期発見ができないかどうかという試みと視野に異常がでる前の緑内障をどのように管理するかというテーマがよく取り上げられていました。平均寿命が長くなり、緑内障の管理もそれに応じた期間で視機能を保持する必要があり、早期発見早期治療により重点を置くというのは当然の流れです。ただ、視野変化が無く(=自覚症状がない)眼圧も正常の状態で、さらに眼圧を下げるという治療が必要であることをご理解いただくのはなかなか難しいのも実際で悩ましいところです。眼圧を下げる以外の治療を模索する発表もあったのですが、実用の域にはまだまだといった感じです。
そういえばアンチエイジングに関するシンポジウムにも参加してきました。アンチエイジングには大きく2つの仮説があり、カロリス仮説と酸化ストレス仮説というそうです。カロリス仮説とはカロリー・リストリクションつまりカロリー摂取を必要な栄養素を確保した上で65%ぐらいに減らすことでアンチエイジングを図ろうという仮説です。これの対極にあるのがカロリー摂取過多によるいわゆるメタボで、高血圧・糖尿病・高脂血症などで寿命を縮めるパターンです。
酸化ストレス仮説とは活性酸素によって細胞が傷害され老化が進行するという物です。活性酸素に暴露されない生活、体内で活性酸素を生じさせないような生活を送ることが基本です。そのためには抗酸化作用のある食物(特に野菜や果物)をバランスよく摂取し、適度の運度をしながらストレスをためない生活を送ることだそうです。そのなかでサプリメントについても言及がありました。眼科領域ではルテインが黄斑変性症の予防にある程度期待されるというアメリカでの発表がありますが、それ以外の病気ではっきりとした効果が確認されているサプリメントはありません。私の感想としてはサプリメントを利用することは悪くないと思いますし、体にとってよいものは基本的に目にとってもいいものです。しかし過剰摂取で問題を起こす物もあるようなのでほどほどが大事です。
両仮説に通じるのはやはり「食生活をはじめとする生活習慣の改善から」でしょうね。