オーダーメード治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集  充血 2013.09

今回のコラムは最近気になっている「充血」に関してです。 「目が充血しているので何とかしてほしい」という方が増えています。充血と言っても深刻な事態のものから、ただの疲れ目によるものまでいろいろあります。 私から見ると正常の範囲内で、充血しているように見えないのに「眼が赤い」とことさら気にされている方もいらっしゃいます。

充血を解消する基本は充血した原因を取り除くことです。病気であれば私たちの出番ですが、そうでない生活環境に原因があることも実は多いのです。 たとえば夜勤などで生活が不規則な方、パソコンや運転などまばたきの回数が極端に減る作業を長時間される方、そしてコンタクトレンズを長時間(長期間)されている方などです。 もちろんドライアイなどの治療対象になる問題を抱えていることも多いため、それらの治療を行うことで少し改善することもあります。 しかしながら充血しやすい生活環境を何とかしないことには解消することは困難です。 しかも慢性化してしまっている場合、特にコンタクトレンズ装用を長時間長期にわたって装用されている方の充血はコンタクトをはずしてもあまり良くならないこともあります。

その一方で、このように時間と手間がかかる原因を取り除くことではなく、「血管を収縮させて」充血を取ろうとする目薬が市販されています。 血管を収縮させると流れる血液が減るので当然充血は軽くなります。 しかもある程度即効性があるので点眼してしばらくすると見た目に変化が出てきます。

ドライアイや結膜炎などあるいは生活習慣からくるストレスが原因で、眼が栄養や酸素を必要としているからこそ血管が拡張し血液の流れが増加し充血しているのです。 それなのに無理矢理血管を収縮させて血液の流れを悪くすることが解決になるはずがありません。 安全性が確認された上での市販ではありますが、血管収縮剤の効果が切れるとその分を取り戻そうとしてかえって充血がひどくなってしまったり、目が血管収縮剤に慣れてくると薬の持続時間が短くなってくるので頻回点眼による副作用が出ることもあります。 あまり長期間頻回に使うと血管収縮剤入りの目薬をさしても効果が現れなくなってしまい充血がそのままずっと続いてしまうこともあります。こうなると生活習慣を改善しても充血はなくなりません。 もはや目薬のせいで血液の流れを調節する機能が破綻して血管が拡張したままで元に戻らなくなってしまうためです。

眼科医が処方する目薬にはこれまでおはなしした理由で、安易に見た目だけを何とかしようとする血管収縮剤のような成分は入っていません。 それなのに簡単に買うことの出来る市販薬に短期間で「眼を白くする」という結果だけをお手軽に求めるのは問題があると思います。

また、「先生、この市販の目薬のようにすっきりするやつないですか?先生が処方してくれる目薬はさし心地が何か頼りない感じです。」と言う方がときどきおられます。 「すっきり爽快なさし心地」を宣伝文句にしている目薬にはメントールという成分が含まれています。 安全性は確認した上で販売されているものなので使用法を守っていればまず大丈夫です。 ただ、私はこの成分が入った目薬はあまりお勧めしません。 爽快感というより強い刺激があることで本来ならば受診しなければならない病気の症状をごまかして病状が悪化する可能性があります。また、刺激になれてしまうと決められた用法以上に頻回に点眼しないと同じ爽快感が得られなくなってしまい、さしすぎによる添加物や防腐剤によるトラブルが出現してしまうこともあります。 さし心地が刺激的なのとトラブルが解決したのとは別の話なので注意が必要です。