コラム集 網膜年齢ギャップ 2026.06
眼球は血管、網膜、神経などを直接観察することができるめずらしい臓器です。
この特性を生かしてあらゆる年齢の眼底写真を大量に読み込みデータを蓄積して、AIを用いて写っているいろいろな所見をもとに、実年齢を高精度に予測できるようになりました。
これを網膜年齢といいます。
例えば60歳の人の眼底写真が55歳と判断されれば網膜年齢は5歳若いことになり、65歳であれば実年齢より5歳年を取っていると判断されたことになります。
この実年齢と網膜年齢の差を網膜年齢ギャップと呼びます。プラスのほうにギャップが大きいほど同年齢の人より老化が進行しているという判断になります。
もちろん病気の診断をしているわけではなく、将来の発病予測や因果関係を示唆しているわけでもありません。 あくまでも指標の一つとして網膜年齢ギャップを利用していろいろな疫学調査が行われています。例えば
・高齢者の緑内障患者さんとそうでない高齢者のグループを比較すると、患者さんグループのほうが網膜年齢ギャップがプラスにシフトし、網膜年齢が加速している。
・白内障術後患者さんに対する満足度調査で、ギャップが小さい方のほうが満足度も高く、眼鏡依存も低い。
・網膜年齢ギャップが大きいほど、将来の糖尿病網膜症発症リスクが有意に上昇する。
・網膜年齢ギャップが +1歳増えるごとに全死亡リスクが有意に上昇し、特に +3~5歳以上のギャップ を持つ群でリスクが高まる。
などです。
現時点では網膜年齢ギャップの評価としては
・健診でのスクリーニング
・生活習慣病リスクの早期把握
・眼科検査を全身医学に橋渡しする新しい指標として期待 といったところでしょうか。
アルゴリズムがブラックボックスなのが気になりますが、今後の進展に期待です。
