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視覚障がい者のパラリンピック 2021.06

東京2020パラリンピックでは22種目の競技があります。公正さを担保するために、各競技には障がいの程度に応じたクラス分けがあります。 視覚障がい者が参加する種目は9種目で、陸上、水泳、柔道、自転車などオリンピックでも開催されている競技があります。 それに加えて「ゴールボール」「5人制サッカー」という視覚障がい者独自の競技があります。 ゴールボールは全盲から弱視の選手まで出場できますが、公正に競技を行えるように全員アイマスクを着用します。 バレーボールコートと同じ大きさのコートを使い、一番後ろのラインがゴールとなっています。 1チーム3名で音源入りのボールを転がしあってゴールを狙う競技です。 5人制サッカーはブラインドサッカーとも呼ばれていて、フットサルと同じ大きさのコートを使います。 フィールドプレーヤーはアイマスクを装着し、音源入りのボールをドリブルやパスでゴールまで運ぶ競技です。

どの競技でも公正さと安全性が確保できるように工夫されています。 5人制サッカーでもサイドラインはぶつかってもけがをしないような壁にし、サイドラインを割らないように工夫しています。 選手はゲームの状況を伝えるガイドや、ベンチにいる監督の指示に従いゴールを目指します。 水泳でも視覚障がいが最も強いクラスでは、公正を期すためにブラックゴーグルを装着して競技を行います。 選手の安全を確保するために、ゴールやターンの直前に、コーチがタッピングバー(長さ約2mの棒の先にウレタンのボールが付いたもの)で 選手の体の一部をタッピングして、壁の位置やそれまでの距離をスイマーに伝えるというルールがあります。

オリンピックではロシアのドーピング問題などの不正が指摘されていますが、残念ながらパラリンピックでも不正が指摘されたことがあります。 パラリンピック史上重大な不正事件としては、シドニーパラリンピック(2000年)で起きた「スペイン健常者替え玉事件」があります。 スペインの知的障がいバスケットボール代表選手12名のうち10名に障がいがなく、健常者が知的障がい者のふりをして参加し不正に金メダルを獲得しました。 明らかに組織的な不正です。 視覚障がい者も外見上健常者と変わらない方も多く、それを利用した不正がリオデジャネイロパラリンピック(2016年)柔道での韓国選手団による不正です。 柔道はゴールボールや5人制サッカーと違いアイマスクなしで行います。出場15名中11名が視覚障がい者ではなく、不正にメダルを獲得した事件です。 視覚障がい者が参加するほかの国際大会にも出場していたそうです。アイマスクをつけて行えばこんな不正はなくなるのかもしれませんが、 激しい競技なので途中で外れてしまいそうで現実的ではなさそうです。 視覚障がいの認定には明確な基準があり、それに従って必要な検査を行います。 韓国選手団の中には運転免許を所持している人もいたそうで、眼科医も組織ぐるみの不正の一端を担っていたのでしょう。他山の石として我々も襟を正さなければいけません。

ちなみに冬季パラリンピックではアルペンスキー、クロスカントリー、バイアスロンの3種目で視覚障がい者が競い合います。 コラム執筆時点では、オリンピックパラリンピックは開催される方向で準備されています。安全にそして安心して開催できるような社会情勢であること、出場選手が実力を発揮できるような競技環境であることを心より願っています。