オーダーメード治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集 視神経炎 2015.08

前回コラムで視神経症という視神経の病気をご紹介しましたが、今回は視神経炎についてです。 視神経の病気は炎症が原因であれば視神経炎と呼ばれ、それ以外であれば視神経症と呼ばれています。 症状としては、比較的急激な視力低下、視野欠損、色覚低下などの症状が出ます。 これらは視神経症と同じ症状ですが、視神経炎に特徴的な所見として眼球運動痛があります。 目をきょろきょろさせると炎症起こしている視神経が一緒に動かされるので痛みが出るのです。

視神経炎で一番多いのは特発性、つまり原因はわからないが視神経に炎症が起こってしまう状態です。 特発性以外では多発性硬化症という病気でおこる視神経炎や、最近では抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎という新しい病態が明らかになりました。

特発性視神経炎はわずかな視力低下程度の軽いものから光覚がなくなる(真っ暗で何も見えないし明かりも感じない)ところまで重症化するものまでいろいろです。 幸いなことに治療しなくても徐々に回復してくることが多く、最終的な視力、視野などの視機能は治療してもしなくても同じであったという結果もでています。 ただ、最終視機能は変わらなくても治療をしたほうが回復するスピードは速いので、早期回復を望む方や視機能の低下の強い方には積極的に治療を行います。 症状が軽いからと言って特発性とは限りません。見え方がおかしいなと思ったら必ず眼科を受診してください。

視神経炎の原因として重要な病気に、神経系に障害を起こす多発性硬化症があります。 多発性というのは時間的にも(再発しやすい)、病気のおこる場所にも(あちこちの神経系に起こりうる)あてはまるのが特徴です。 この病気の原因は神経を包んでいる髄鞘というところに障害ができて神経がむき出しになってしまう脱髄という現象です。 神経は電気ケーブルのようなもので、電線(芯)にあたるのが神経で、髄鞘はその周りにあるビニールの管のようなものです。 電線は送電能力を維持するためにビニールの管に包まれて雨や風にさらされないようになっています。 しかしビニールがなくなってしまうとその部分から電線は腐食したりあるいはショートしたりして正常に電気を送ることができません。 これと同じように脱髄がおこると神経は正常に情報伝達できなくなってしまうのです。 多発性硬化症による視神経炎は、脱髄の範囲が広がるのを食い止め、神経の機能をできるだけ保つという目的からステロイド点滴治療を含め積極的な治療を早期から行います。

特発性視神経炎は比較的予後がよく、多発性硬化症による視神経炎も再発を防止しながら早期治療を行えば比較的視機能を維持できることが多いのですが、 いろいろな治療を受けていただいても再発を繰り返し視機能が高度に低下してしまう予後不良な視神経炎がありました。 最近までなぜそうなるのかわからなかったのですが、その多くが抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎だと明らかになりました。 詳しくは日本眼科学会のHPなどを参照していただければと思いますが、 この視神経炎は圧倒的に女性に多く、治療法としては早期にステロイドパルス療法を行い、治療効果がなければ血漿交換などの治療を併用することになります。 大がかりな治療になるのですが、難治性で再発の多いこの視神経炎に対してもなんとか視機能を維持できるケースも増えてきています。 このように検査法や診断技術の向上により、正確にそしてできるだけ視機能を温存できるように治療することが少しずつですができるようになってきています。