オーダーメード治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集 OCT緑内障 2011.08

緑内障とは、フィルム(網膜)と現像所(脳)との間の情報伝達を行う視神経が障害を受け、情報伝達がうまくいかなくなる病気です。そのため、トラブルのあるところに一致して見えにくいところが出来てきます。視神経というのは100万本あまりの神経線維という細い線の束で出来ています。この神経線維は網膜の表層を走っており、その部分は神経線維層と呼ばれています。この層の厚みが健康な眼と比べて薄くなっている方は神経線維が減少し、その集合体である視神経に、緑内障をはじめとする何らかのトラブルが起こっている可能性があります。

神経線維層の厚みを測ることで緑内障診断を行うという試みは少し前からありましたが、OCTの撮像方法が飛躍的に発展したことと、緑内障診断のプログラムが開発・改良されたことで、診断の一助になるようになりました。

緑内障診断プログラムには大きくわけて2つあるのですが、今回は当院を含め緑内障外来で一般的に用いられているプログラムについてお話しします。図はその結果を示したものです。これは視神経乳頭(視神経や血管の出入り口)の周囲を同心円状に(図A白矢印)断層写真を撮り、その結果から神経線維層の厚みを算出してグラフ化したものです(図B)。実際の断層像は、小さいですが図Cに示されています。図2のグラフの読み方は、横軸は視神経乳頭付近の上下左右どの場所かを示し、縦軸は神経線維層の厚みを示しています。分厚いほどつまり神経線維がたっぷりあるほどグラフでは上になります。また3色に色分けされていますが、これは同世代の方と比べて厚みが十分であれば緑色、平均ぎりぎりなら黄色、厚みが薄くて障害を受けているかもしれないなら赤色に分けられています。上下左右のどの部分も均一な厚みがあるわけではないので、各ゾーンも患者さんの実測値(グラフ内の黒線)も波打つようになっています。緑内障の早期診断に使えるということになっていますが、私はどちらかというと緑内障で視野障害がでている方の障害がでていない正常部分を担当している神経線維に余力があるかどうかを見ることに使うことが多いです。測定位置がずれると結果も若干違ってくるので、視野検査のような精密さや再現性にはやや乏しいです。とはいっても、視野より圧倒的に検査が楽なので、体調や年齢で視野検査を受けていただけない患者さんには朗報です。

一部のタイプをのぞいて緑内障はゆっくりと進行する慢性疾患です。すぐに治療を開始することがほとんどないため、心配に思われる方もいらっしゃるかもしれません。慢性であるがために治療は長期にわたります。そのために治療前のしっかりしたデータを蓄積しておくことが大切なのです。これをあらかじめ行っていないと、やみくもに治療を始めても正確な治療効果の判定ができません。何度か時間や季節を変えて血圧を測定し、必要であればお薬を開始するという高血圧の治療と同じようなものです。