オーダーメード治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集 大人の近視化と調節痙攣 2014.03

あくまでも私見ですが、成人してからも徐々に近視化する方が最近増えているような印象があります。 特にパソコンや携帯などの電子機器を長時間見続ける作業を目に強いる方(私を含む)に多いような気がします。 学童期に起こる近視化は体の成長とともに眼球も大きくなる(=眼軸長が長くなる)ことによるもので、ある意味生理的なものでした。 眼軸長とは角膜(目の表面)から網膜(フィルム)までの長さのことで、長ければ長いほど一般的には近視が強くなります。 ただ、これはテレビをはじめとする電子機器をあまり見なかった頃の昔の話です。

数十年前からはテレビ視聴や勉強など近くを見る時間が増えることによると思われる近視化が増えていました。 そこにパソコンやスマートフォンなどの電子機器使用が低年齢化してきたことでさらに近視になる児童数が増えてきた事以外にもいくつかの問題点が指摘され始めています。 日本小児科医会からは「スマホに子守をさせないで」なんていう啓発ポスターが出たりしています。 これらのことについてはまた別の機会にお話ししようと思います。

病的なごく一部の近視を除いては、成人してからさらに眼軸長が伸びるとは考えられません。 実はどうして近視化するのかは科学的にしっかり解明されているわけでないのですが、 毛様体筋(図1)という水晶体(レンズ)の厚みを変えてピント合わせを行う筋肉の変調によるものだろうといわれています。 毛様体筋は遠くを見ているときにはリラックス(弛緩)しています。 近くを見ようとすると毛様体筋が緊張(収縮)することで水晶体が分厚くなり近くにピントを合わせようとします。

長時間近くを見続けると毛様体筋の緊張がずっと続くことになり、肩こりと同じようないわゆる筋肉が「こった」状況になります。 こりを解消できるような状況があればいいのですが、それどころか近くを見続けこりがほぐれるどころかどんどん疲労が蓄積し 筋肉痛やこむら返りが起こりかねないようなところまで毛様体筋をはじめとする眼の各部分に過重な負担をかけている人がほとんどだと思います。 こり固まった状態が続くと近くを見る態勢のままで目が固まってしまうので近視化(調節緊張)してしまいますし、 こむら返りが起こるような状況まで追い込まれると調節痙攣というさらにつらい症状が出ることがあります。 一般的には調節緊張と調節痙攣は同じ意味として使われることが多いのですが、私自身はこのようなイメージを持って使い分けています。

肩こりもひどくなると頭痛や吐き気を催したり、痛くて腕を上げることができなくなったりします。 目でも同様にかすみ、眼痛などの目の症状に加え頭痛、吐き気、めまいといった目以外の症状が出ることがあります。

近視(調節緊張)が進行するといっても1日や2日という短い単位でどんどん進行することはありません。 ただ調節痙攣におちいってしまうと近視の強さや眼鏡で矯正した視力が、同じ日にもかかわらず検査するたびに大きく変動してしまいます。 精神的に不安定な児童に出ることもあるのですが、大人の場合はパソコンなどの電子機器類の長時間連続使用といった 生活背景に加え、携帯からスマートフォンへの切り替えや紙の本から電子書籍に変えた後に起こりやすいようです。 職業カメラマンの方でファインダーを覗いている側の目だけに調節痙攣が起こったという報告もあります。 体も健康な方から病弱な方までいろいろいらっしゃるように、目にもストレスに音を上げないタフな目もあれば、 少しのストレスで不快な症状が出てしまうデリケートな目までいろいろあります。

つらい症状が出てからでは治るのに時間がかかりますし、目がつらく感じている環境が続けばその症状もずっと続いてしまうかもしれません。 薬での治療も選択肢としてはありますが、まずは目にやさしいライフスタイルに変えるように意識することが必要ではないでしょうか。