コラム集 交通事故と眼科 2024.11
交通事故に関するデータで2023年に気になる変化がありました。 交通事故そのものは減少傾向を続けているのですが、自動車乗車中の重症者数が初めて増加に転じました。
バスやタクシー、トラックなど運送業者の事故の頻度が高いことはこれまでも指摘されていました。
運転時間が長いということも一因だとは思いますが、バスの事故率は一般の車より低いのに対して、タクシーの事故率は一般の車の1.5倍だそうです。
国土交通省から出ている事業用自動車の事故統計でもバスやトラックと比べてタクシーは交通事故率が高いことが示されています。
またタクシー運転手の年齢が高いほど事故割合が多くなる傾向があります。タクシー運転手の高齢化とそれによる事故を防ぐ対策が急がれています。
国交省が着目しているのが緑内障などの目の病気です。
視力低下や視野障害があれば安全運転に重大な影響を与えるからです。
そこで運送業の運転手が視野障害による交通事故を起こすことを少しでも減らすために「自動車運送事業者における視野障害対策マニュアル」を策定しました。
さらに国土交通省は「眼科検診普及に向けたモデル事業」を実施。この中で、職業運転手の眼科検診による大規模な調査が行われ、今年4月に国交省はその結果を公表しました。
通常の視力検査に加え、眼圧測定と眼底検査を行っています。
異常所見ありと診断され、精密検査を受診した方のなかで運転を中止しなくてはならないような深刻な事例は幸いなことにありませんでしたが、
緑内障(疑いを含む)、網膜疾患など視力検査だけでは発見できない病気があると判断された人が全体の11.2%に認められました。
年齢が上がると異常所見を認める割合が増える傾向にあり、70代のタクシー運転手の約半数に目の異常が認められたそうです。
年齢が上がれば全身的にもいろいろな問題が出てくるのは当然のことで、目に限った話ではありません。
繰り返しになりますが運転を中止しなければならない深刻なものではなかったようです。
ただ、異常所見ありという評価を受けた運転手が精密検査を受診しなかった割合が、2021-2022年度で61-65%、2023年度では80%にも達していました。
つまり異常を指摘されても精密検査をあまり受けていないということです。
「業務多忙のため」「自覚症状がないため」などがその理由だそうです。
これは私たちにも当てはまることです。
人間ドックなどで異常を指摘されても放置してしまい、深く静かに病気が進行していずれ大きなトラブルに発展してしまう可能性があります。
眼科に限らず検診で異常を指摘された方は必ず医師の診察を受けてください。