オーダーメード治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集  LASIKと緑内障 2012.08

LASIK(レーシック)とは近視や乱視を角膜のカーブを変えることによって矯正する屈折矯正手術の一つです。 細かい方法の違いによっていくつか違う呼び名がありますが、黒目(角膜)の表面をレーザー照射によって削ることは同じです。 少し古いですが眼科学会の「屈折矯正術」にその方法が載っています。今ではとても多くの方々がこの手術を受けてメガネやコンタクトレンズから解放された生活を送っておられます。 私はLASIKそのものについてはどちらかというと肯定的(積極的に勧めるわけではない)ですが、以前とんでもない衛生管理で手術後に多くの角膜障害が出た事例もあるため、受ける施設を価格や広告だけで判断しないようにお願いします。

もちろん誰にでも受けていただける手術ではなく、手術を受けてもあまり効果が期待できない方あるいは手術を受けてはいけない方がいらっしゃいます。 また、術後に裸眼視力回復という期待していたものとは違う症状が現れてしまうこともあります。当院に相談に来られる方の多くは「ドライアイがひどくなった」です。 脅かすつもりはありませんが、 LASIKを考えていらっしゃる方は眼科医会の「レーシックを受けることをお考えの皆様へ」を読んでみてください。

さて、本題の緑内障との関連についてですが皆さんの関心は

1. 緑内障患者でも受けられるか?

2. LASIKを受けることで緑内障を発症することがあるか?

3. LASIKを受けると将来緑内障になりやすいのか?

の3つではないかと思います。

1. 緑内障患者でも受けられるか

受けること自体は可能です。しかし私を含めほとんどの眼科医は受けないことを強く勧めており、まず手術をしてもらえないと思います。 その理由は、緑内障の管理がしっかり出来なくなってしまうからです。緑内障に関してはこれまでのコラムを参照していただければと思いますが、治療法の進歩はあるものの残念ながら失明原因の上位を未だに占めている病気です。 LASIKを考えていらっしゃる方はほとんどが40歳までの方なので、そんな若い頃からしっかり管理できないとなれば大変深刻な問題です。

LASIK後に生じる一番の問題は眼圧測定が正確に出来なくなることです。 LASIK後は見かけの眼圧がそれ以前より低く出ます。そのため治療効果を過大評価したり、目標眼圧の設定に狂いが生じたりしてしまいます。 測定方法の改良や治療指針の見直しを行っているところですがまだ道半ばですし、LASIK前後での眼圧の比較が出来ないというのも治療の継続性を阻害してしまいます。 また、これは私個人の意見なのですが、緑内障患者さんの角膜はできるだけいいコンディションに保っておきたいのでLASIKはやめておいてほしいのです。 たいていの緑内障点眼薬は角膜表面にキズや炎症を起こしやすいという困った副作用があります。 点眼を中止して角膜の治療を優先せざるを得ない場合もあるため、出来るだけ角膜のコンディションを他の要因で悪くしたくありません。 先ほどのドライアイの悪化にもつながりますが、LASIK後に角膜表面のコンディションが少し悪くなる方がいらっしゃいます。 このような点から考えてみても緑内障患者さんはやはりLASIK不適応です。

2. LASIKを受けることで緑内障を発症することがあるか?

LASIK術中は眼圧の変動がかなり大きく、しばらくの間ですが高眼圧により視神経にストレスをかける可能性はあります。ただ全く無害とは言わないまでも、緑内障でない眼であればその程度の眼圧変動で緑内障を発症することは原則としてないとされています。 緑内障患者さんの場合はそもそもLASIK不適応ですので、LASIKを受ける前に少しでも緑内障の疑いがあればしっかり検査する必要があります。

3. LASIKを受けると将来緑内障になりやすいのか?

LASIKを受けたからといって将来緑内障になるリスクは変わりません。 そこは大丈夫なのですが、LASIK後は眼圧がそれ以前より低く出ます。 そのため本来なら眼圧が高くて検診で引っかかるはずだった方が、眼圧正常として検診で見逃されるリスクがあります。 それに加え、緑内障になりやすいリスク要因の1つとして高度近視があります。 LASIKを受けて高度近視が治ったとはいうものの角膜を薄くしてメガネをかけなくていいようにしただけで、網膜や視神経にある緑内障のリスク要因は全く変わっていません。もともとLASIKとは関係なしに緑内障になるリスクが他の人より少し高いので、検診やチェックを欠かさないようにしていただければと思います。