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コラム集 流涙症 2021.10

流涙症はまぶたから涙があふれてしまう症状です。涙は眼球の外上方にある涙腺から分泌され目の表面を潤します。 まばたきには目の表面に涙をまんべんなく配る役目と、溢れないように涙をぬぐう役目があります。 まぶたの目頭側の上下に涙点という排水口に当たる組織があります。 そこから涙小管~涙嚢~鼻涙管を通って鼻に涙が流れていきます(図)。これを涙道と呼び、まばたきで涙道にうまく涙を流せなかったり、涙道そのものが閉塞したりすると流涙がおこります。

慢性的に起こる多くの流涙症は、加齢により涙道にうまく涙を流せないことが原因です。 まばたきの能力が低下したり、結膜がたるんでしわになり、うまく涙がぬぐえない状況(結膜弛緩症)になったりしたときに起こりやすくなります。 弛緩した結膜を切除するなどの治療を行うことがありますが、加齢によるものなので効果が限定的な場合があります。

涙道そのものの閉塞は先天的に起こることも珍しくはありませんが、1歳までに90%、2歳までに95%が自然に治るとされています。 以前は涙道閉塞を解除するためにブジーという医療用の針金で治療していましたが、最近ではまずは何もせず経過を見るという方針が主流です。

後天的な涙道閉塞は加齢性の変化や、涙道の慢性的な炎症などが原因でおこることがほとんどで、点眼薬で改善することはありません。 涙道内視鏡などの専門検査ができる施設で診察を受けていただいて治療方針を決定します。 多くの場合、涙道にシリコン製の涙管チューブを留置してておいてしばらく放置し(約2か月間)、閉塞が解放される頃を見計らって抜去します。 ただ、これでも再閉塞してしまう症例や涙道そのもののダメージが強すぎる症例では涙嚢鼻腔吻合術という手術を行います。 文字通り涙嚢(図)と鼻腔を隔てている薄い骨を除去し新しい涙の通り道を作成する手術です。