コラム集 医療情報の電子化 2023.01
去年10月、サイバー攻撃を受け一時的に診療を取りやめた大阪市の総合病院「大阪急性期・総合医療センター」が1月4日、 約2カ月ぶりに全ての診療科での外来受け付けを再開しました。 報道によると院内でバックアップを取るなどの対策を講じていたにもかかわらずのトラブルだったようです。 国からの応援を得て復旧に注力しても2か月かかってしまっています。サイバー攻撃を含むこのようなトラブルを未然に防止し、万が一トラブルが発生した時には速やかな復旧を図る。 これが原則ですが、そこに割ける人的・金銭的な余裕は診療所レベルではありませんし、それを支援してもらえるような診療報酬の項目もありません。
令和2年の段階で、電子カルテ導入率は一般病院で57.2%、当院のような一般診療所で49.9%だそうです。 政府は電子化した全国民のPHR(Personal Health Record、個人の健康状態や治療履歴、現在の治療内容など健康に関する全ての記録)を集めてビックデータとして解析し、 医療資源の有効活用を図ろうとしています。 これに関しては異論はありません。 電子カルテを導入していても自分の診療所内だけで患者さんのデータを保存・管理していれば、ほかの病院からはアクセスできないので、患者さんのPHRとして共有できません。 特に高齢の患者さんは複数の診療科さらには病診連携で同じ科でも複数の病院を受診しているケースも珍しくありません。 そこでクラウドを利用して患者さんの医療・健康にかかわるすべてのデータをPHRとして一元的に管理できれば、 投薬の重複や飲み合わせの悪い薬の投与を予防でき、各種検査の重複や結果の見落としを防止できるなどのメリットが患者さんの側にもあります。
クラウドとはインターネット経由でデータセンターなど別の場所で管理しているデータやアプリケーションにアクセスできる仕組みです。 診療所内に特別なパソコンは必要なく、データやソフトの更新やメンテナンスなどの雑用から解放されるというメリットはありますが、 初めにお話ししたようなサイバー攻撃を受けた場合や、災害などでインターネットが使えない状況になれば診療に大きな支障をきたすことになります。 クラウドに集まった全患者PHRをビッグデータとして集積・解析するには標準規格に基づいた病院側の電子カルテシステムと患者さんのマイナンバーカードによる受診が必要です。 標準規格に完全には準拠していない電子カルテも多く、当院ではいまだ導入に躊躇しています。 自分の診療所内だけで管理するのであれば紙カルテで十分かつ便利だからです。 紙カルテで困るのはどこにあるのか探せなくなることですが、当院では迷子になるカルテは皆無に近い状況です。 しっかり管理してくれているスタッフに感謝しています。
当院でもできることから少しずつ対応していこうと思っています。 マイナンバーカードの保険証としての利用を、2月上旬からできるようにするために準備中です。利用可能になりましたら院内掲示とともにホームページでもお知らせします。