オーダーメード治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集 病名の話と感染症 2015.06

病気にはいろいろな名前がついてます。 眼科では眼圧が上がって瞳の奥が青緑色に見えることから緑内障、瞳が白く見えることから白内障など見た目から命名された病名があります。 そのほかにもいろいろな命名法があるのですが、その一部は不適切ではないかとの指摘がありました。 そこで今年5月に世界保健機構(WHO)が新たに見つかった病気に命名するときの指針を発表しました。 これは感染症を名づけるときに不適切な表現がないようにするためです。

感染症とは空気・水・土など私たちが生活している環境中にいる病気を引き起こす可能性のある微生物が体の中に侵入して人体に有害・不愉快な症状を引き起こす病気です。 いくつかの不適切とする基準があるのですが

1.地域や国名など

 

これはそこに住む人や民族に偏見を持ったり、イメージダウンが起こったりしないようにするためです。 蚊が媒介するウイルスによる日本脳炎などがそうです。 今韓国で大変なことになっているMERSも中東呼吸器症候群が正式名称で今回の基準では不適切ではありますが、この指針が出る前に命名されています。

2.人物名

実は人物名のついた病気はとてもたくさんあります。 多くはその病気を報告した人の名前が付けられています。 眼科では緑内障の一つであるポスナーシュロスマン(Posner-Schlossman)症候群や、フォークト・小柳・原田(Vogt-Koyanagi-Harada)病など日本人の名前がついているものもあります。 病気を最初に見つけて報告し、その病気に自分の名前を付けるという名誉は確かにありますが、 人にうつしたり人からうつったりする感染症に人名が使われると同じ名前の人はあまりいい感じしませんよね。 いじめの原因になっても困りますし。

3.動植物名

鳥インフルエンザ、麻痺性貝毒など、特定の動植物に対する偏見やイメージダウンが心配されます。

4.文化・産業・職業など

5.致死性、伝染性など不安をあおるような表現

などが挙げられています。至極当然な指摘だと思います。


ところで先に例として挙げたMERSですがこのコラムを書いている時点(6月中旬)で、韓国で猛威をふるっています。 MERS(Middle East Respiratory Syndrome、中東呼吸器症候群)はコロナウイルスというウイルスによる感染症です。 以前に問題となったSARS (SevereAcute Respiratory Syndrome、重症急性呼吸器症候群)もコロナウイルスが原因です。 SARSも上記の5に当たる不適切な表現かもしれません。もちろんそれぞれコロナウイルスでも違うタイプのものです。 2012年6月にサウジアラビアで患者発生が報告されて以来、中東諸国を中心に流行していました。 ところが、現時点ではサウジアラビアに次いで韓国が第2位の患者数となってしまいました。 韓国での流行が速やかに終息するのを願うのと同時に、日本に感染が拡大しないことを祈るのみです。

数年前に新型インフルエンザが神戸まつりの直前に神戸で初めて患者さんが報告されました。 その後の神戸に対するほかの地域のヒステリックかつ非科学的な対応を見てきた私としては、 もしMERSが日本上陸しても感染拡大防止に効果的かつ冷静な対応をみなさんにお願いしたいと思います。 神戸に住む人なら私の意見に共感していただけると信じています。