オーダーメード治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

網膜血管とちょっと変わった飛蚊症 2010.08

網膜血管とちょっと変わった飛蚊症 2010.08

  

図1は眼底写真です。これは網膜というカメラのフィルムに当たる組織が写っていて、図の黒い矢印は視神経乳頭といって網膜の神経や血管が出入りしているところを示しています。飛蚊症は眼の中に濁りができてその影が網膜に映って見える現象です。濁りはいろいろな形をしていて目の中を動くため「蚊や糸くずが飛んでいるような」感じに見えます。大抵は老化現象による濁りですが、中には網膜剥離、眼底出血、眼内炎などの病気によって濁りができることがあります。そのため、飛蚊症が急にひどくなったときはこのような病気を念頭に置いて眼の奥の検査(眼底検査)を行う必要があります。通常の眼底検査では網膜全体を診ることができないので、目薬で瞳を大きく開いて(散瞳させて)隅々までしっかりと検査を行うことがあります。

この検査を受けていただいているときに、「無数の明るい点が飛んで見える」「血管の影が見える」といわれる方がいらっしゃいます。これはそれぞれ名前が付いていて、blue field entoptic phenomenon、Purkinje(プルキンエ)現象といいます。これらの現象は眼の中にあるものが見えるということで内視現象ともいわれています。

blue field entoptic phenomenonは日常生活でも体験することがあります。たとえば青空を見ているときやシーリングライトなどの光源を見ているときにも起こることがあります。名前の由来も青空を見ているときに起こりやすいことからきています。いっぱい飛んで見えるので飛蚊症といえばそうですが、通常のものとは原因が異なり、網膜の毛細血管を流れる血球の影を見ているといわれています。そのため図2のように同じ道筋でいくつも見えたり、毛細血管のないど真ん中には見えないなどの特徴があります。

プルキンエ現象は図1の中抜きの矢印のような大きな血管の影が、眼底検査のような強烈な光が目の中に入ってきたときに少しの間だけ見えているのです。この現象も目を閉じた状態でペンライトなどの光源をまぶたに押し当てて点灯させると日常生活でも体験できることがあります。ただし、目を閉じていても長時間強い光を当て続けることは危険ですのでご注意ください。

網膜は10層からなる構造をしていて網膜の大血管と毛細血管がともに光の通り道にある表層近くにあり、一番深い層に光を感受する視細胞という細胞があります。そのため強い光が入射すると光の通り道にある血管や、その中の血球の影が見えたりするのです。ふつうに考えれば網膜の一番表層に光を感受する細胞層がある方がじゃまな物がないぶんクリアに見えるように思いますが不思議なものです。ただ、この2つの現象はいずれも病気を示唆するものではないのでご心配なく。