オーダーメード治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集  点眼薬あれこれ 2019.05

余談ですが、「目薬をさす」の「さす」という表現に皆さんはどの漢字を当てはめますか? いくつか該当する漢字があるのですが、かつては「点す」あるいは「注す」という表現が用いられていたようです。 今は常用漢字表にない用例となってしまい、今は「差す」あるいはひらがなのままで「さす」というのが一般的なようです。 点眼という単語はこの「目薬を点す」という表現が由来です。 「目薬をうつ」という表現を使う人が、特に若い方にいらっしゃいます。 「注射をうつ」と同じ感覚の用法なのでしょうか、診察中にときどき耳にすることがあります。

「目薬がうまくさせません」

目薬のさし方ですが、目の表面に直接落ちなくても大丈夫です。 私は下瞼を引っ張って「アッカンベー」の状態にして、瞼と目の境目あたりに落とすイメージでさしています。 上下両方を引っ張って開けようとするとそっちに意識がいってうまくさせないときがあるためです。 また、まつ毛や瞼にボトルの先が触れないように注意してください。でないと点眼液を清潔な状態に保てません。 点眼がうまくできない方のための補助器具もあります。院内にも展示していますので興味のある方はお気軽にご相談ください。

「目薬がすぐなくなります/目薬は一滴でいいのですか?」

いくつかの緑内障治療薬や1回使いきりの目薬以外は、ほとんどが1本5ml入りです。 さす角度やボトルを押すスピードにもよりますが、目薬1滴は大体30-50μlで1回分としてはこれで十分です。 それ以上さしてもあふれるだけで効果は変わりませんし、かえってまぶたの縁についてまぶたが荒れたりする原因にもなりかねません。 両目に1日4回さすのであれば1本で2週間ぐらい持つことになります。 うまくさせず一度に何滴も使う方もいらっしゃると思いますが、すぐになくなってしまう方はさし方と用法を今一度確認してください。 緑内障治療薬や結膜炎治療薬の中に使用前によく振ってもらわないと効果が発揮できないものもあります。使用方法を守って点眼して下さい。

「目薬をさしたあと目をぱちぱちした方がいい?」

目をぱちぱちすると目薬が行き渡るようなイメージは確かにありますが、実際はそうではありません。 まばたきを頻繁にすると、かえって目の表面からどんどん目薬の成分がなくなってのどの方に流れ出てしまいます。 たとえれば、車のワイパーを速く動かすとフロントガラスの雨水がすぐに拭き取られてしまうようなものです。 できれば目頭を押さえて5分ぐらい目を閉じて静かにしてもらうのがいいのですが、忙しいとなかなかできません。 点眼後はぱちぱちせずに短時間でもいいから目を閉じた状態でいていただければと思います。

「寝る直前の点眼は目に良くない?」

私が医師になる前には添加物などの関係でそのような目薬があったそうですが、今処方されている目薬は寝る直前にさしてもらっても全く問題がありません。 それよりもさしてすぐ寝た方がそれこそ「目をぱちぱちせず目を閉じた状態」がずっと続くわけですからよく効くぐらいに考えてもらって結構です。

「目薬と目薬のさす間隔はどれぐらい?/目薬をさす順番は?」

間隔は5分以上開けて、一番大切な目薬を最後にさすというのが原則です。 先にさした目薬は後からの目薬で流しだされてしまう可能性があるからです。 もちろん十分に時間をあけてさしていただく場合はどれが先でも大丈夫ですが念のためです。 ただ油性のものや懸濁液のものは、先にさしてしまうと後からさしたものがしみこみにくくなってしまうので、最後にさして下さい。 さす順番がある場合は処方するときにお伝えはしておりますが、よくわからなくなったり疑問が出てきたりしたときは遠慮なくおっしゃってください。再度ご説明いたします。

「目薬がしみる・苦い」

「目薬はしみる方がよく効いてる感じがする」という方もいらっしゃいますが、たいていの方にとってはしみることはあまり好ましいことではありません。 目薬の中には涙とは違う浸透圧やpHのために誰がさしてもたいていしみる目薬と、目の表面のコンディションがドライアイや疲れ目で良くないときに点眼の刺激感としてしみる目薬があります。 毎回すごくしみてさすのが苦痛な場合はその方にとってあわない目薬ですが、たまにしみる程度ならそれほど心配していただかなくても結構です。 ただ、しみるのがいやでさすのがおっくうになるようなほどであれば問題です。 特に緑内障の目薬の場合それで点眼が不規則になると困るので、さし心地がよくないときは遠慮なくおっしゃってください。

「苦い」に関してはいくつかの目薬でご指摘をいただくことがあります。 私は新しい目薬が出ると必ず自分で点眼してみてさし心地をチェックするようにしていますが、ドライアイの目薬で苦みが数時間続くことがありました。 個人的には続けるのはちょっと嫌かな・・・というさし心地でした。 ただスタッフはあまり苦みを感じなかったそうでかなり個人差があるようです。

「目薬はまだあります(前のが残っています)」

これは2つの意味で気になります。1つめは開封してから長期間経ったものを使い続けている場合です。 眼科で処方する目薬は開封してからの使用期限は基本1ヵ月です。 市販の目薬ではもう少し長いものや、防腐剤が入っていないため短期間使いきりのものがあります。 説明書でしっかり確認してください。 どれだけ清潔に扱っていても開封すると空気に触れそこからほこりや雑菌が入り込んでしまいます。 「去年の花粉症の時にもらった目薬が使いきらずに残っていたので、今年の花粉症に使ってました。」なんてことは絶対やめてください。 開封して相当期間たっている汚染された目薬を差すと、それが病気のもとになってしまいます。 容器に使用期限が書いてありますがこれは未開封の状態で適切に保存されていた場合の期限であって、開封してもそれまでは使用できるというものでは決してありません。 また、1つの目薬を複数の人で共有して使うこともしないでください。 上記のようなことを避けるための工夫として、油性マジックで点眼ビンに直接開封日や名前を書くのは実は好ましくありません。 油性マジックの成分は点眼ビンの中にしみこんでいくことがあるためです。 できれば点眼ビンを入れているビニール袋に記入していただくことをお勧めします。

2つめはさし忘れが多くないかという心配です。本来2週間から1ヶ月で1本使うような目薬を2ヶ月に1本で足りているというようなケースです。 緑内障点眼薬でこれをされると大変困ります。 規則正しい点眼が必要な目薬は必ずそのようにお使いくださいますようお願いします。

院内には点眼方法のパンフレットも置いてあります。少しでも気になることがありましたら気軽に質問してください。