テーラーメイド治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集 スマホと内斜視 2019.06

スマホを長時間見続けることで内斜視になってしまうことがあります。

遠くのもの見るときは両眼ともにまっすぐ前を向いています(図:上段)。 近くのものを見るときはいわゆる寄り目の状態になり両目とも内側を向きます(図:中段)。 通常ならもう一度遠くを見たときにはまっすぐ前を向く上段の状態に戻るのですが、何らかの理由で近くを見た状態のままで遠くを見る状況になってしまうと、 まっすぐ向いていない目が内側に寄ったままの状態になってしまいます。これが内斜視という状態です(図:下段)。 最近子供や若者に短期間で内斜視になってしまう急性内斜視が増えています。

この原因として長時間のスマホの使用が影響していると指摘されています。 スマホとの距離が近ければ近いほど寄り眼の強い状態になってしまい、 また、スマホはパソコンと違って画面が小さく、字も小さいのでつい近づけてみてしまうこともあります。 けれど、その状態を長時間休みなく続けてしまうと、遠くを見たときに元に戻らなくなってしまったというのが原因だと思います。 さらに幼少期から学童期にかけては両眼視や調節力などの発達が未熟なため、このような想定外の寄り目を長時間強いることによって、スマホ内斜視が成人より起こりやすくなります。

小児眼科医にアンケートした結果、この1年間で5~35歳の急性内斜視を診察したことがあるという眼科医が42%、 そのうち77%がスマホなどのデジタル機器が発症に関係したと考えられる患者さんだったという驚くべき結果が出ています。 急性内斜視はそもそも非常にまれな疾患なので眼科医としてはこんなに多くの患者さんがいるのか!と衝撃的な結果です。

内斜視になってしまうと目が別々のほうを見るためものが2つに見えてしまいます。 例えばテレビを見ると画面が2つあるように見えたり、階段がいくつも重なって見えたりしてとても不愉快で危険な状態です。 頭痛や乗り物酔いのような症状も出てくることがあります。 では休憩すれば元に戻るかというと、数時間程度で戻る人もいるのですがスマホ使用を中止して何か月もたつのに回復しない人もいます。

中学1年生のころからスマホを使い始め、1日10時間以上使い続けた結果、中学2年生で物が2つに見え始めた。 そのまま様子を見ていたが友人から目が内側に寄っていると指摘され高校1年生で急性内斜視と診断を受ける。 スマホ使用時間を短くするも症状があまり改善しないため、手術を受けることを決断した。このような事例もあります。

スマホ使用が急性内斜視の原因になっていることは確かなようです。 ただ、「使用時間」「視聴距離」「発症年齢」「改善するかしないか」などどうすれば内斜視の発症を予防・改善できるかに関してはまだよくわかっていません。 学会ではスマホ使用のガイドラインを検討・作成中とのことです。 特に小児期から学童期にかけてはできるだけ視聴時間を短く、こまめに休憩を入れて遠くを見る、 寝転がって見ない(どうしてもスマホを近づけてみてしまいがちになるためです)などの対策を行い、目にかかる負担を極力軽減する必要があると思います。 スマホ長時間使用は近視化や近視の進行にも関与しているといわれています。長時間連続使用はいいことなど何もないのでご注意ください。