コラム集 目薬がうまくさせていない 2021.12
当院でも多くの緑内障患者さんに治療を受けていただいています。 見えないところ(視野欠損)が広がり、進行すると視力低下をきたす病気で、残念ながら中途失明原因第一位の病気です。 病気の進行を防止するためには、眼圧を下げるための緑内障点眼薬をきちんとさしていただくことがとても大切です。 しかし受診間隔に対して処方本数が少なくさし忘れが多いと思われる方や、処方本数が多くちゃんと点眼できていないと思われる方がいらっしゃいます。 きっちりさしている方に比べ、効果が不安定になったり、副作用が現れやすくなったりします。
山梨大学から緑内障の患者さんの6割以上の方が点眼に失敗しているという論文が発表されました。 外来でドライアイ用の点眼薬を普段通りの方法で点眼してもらい、その状況を観察して評価したそうです。 結果は61.2%の人が失敗と判定されました。「眼球結膜以外の点眼」が76.2%、「目の表面やまつ毛やまぶたにボトルの先が接触した」が22.2%、「2滴以上の点眼」が11.1%でした。
点眼を失敗しやすいのは、高齢者、ボトルを指でつまむ力が弱い方、顔を上に向けにくい方、運動失調や上肢の運動機能が低い方でした。 視機能に関連する生活の質(クオリティー・オブ・ビジョン)を、見やすさ、運転機能、眼痛、視野、色覚、メンタルヘルスなどで評価したところ、すべての項目で失敗群のほうが低下していることが示されました。
いろいろな原因でうまく目薬がさせず緑内障が進行し、それによる視野欠損や視力低下のためにさらにうまく目薬がさせなくなるという負のスパイラルはできるだけ断ち切らなければなりません。 患者さんから、「ボトルが硬くて目薬が出にくい」、「ボトルが柔らかくて一度に何滴か出てしまう」というお話を聞くことがあります。 点眼をうまくできない方に対して、点眼補助器を有償または無償で提供している製薬会社がいくつかあります。その会社の点眼ボトルにしか適応していませんが、うまくさせない方はご相談ください。