コラム集 生活習慣病としてのドライアイと糖尿病 2017.11
今回のコラムは糖尿病とドライアイとの関係のお話ではなくて、生活習慣病としてよく似ているなと日々の診療で感じていることをお話ししようと思います。
ただ、最初にお話ししないといけないのは両方とも決して生活習慣病でない方々がいらっしゃると言うことです。 ドライアイの場合はたとえばシェーグレン症候群などの自己免疫疾患(自分の体を外敵と間違えて攻撃してしまう病気)で起こってしまい、 一生懸命治療しても視機能低下を起こしている方がいらっしゃいます。 また、糖尿病も生活習慣病では決してない1型糖尿病と、ほとんどが生活習慣病である2型糖尿病とがあります。 1型は子供の頃に発症することが多く、成人してからも生活習慣病と周りの人に誤解されて大変つらい思いをしていらっしゃる方もいます。
さて、大部分を占める生活習慣病としてのドライアイと糖尿病のどこが似ているかというと、どうすればいいかはわかっているけれどなかなかそれが実行できないと言うことです。糖尿病も食べたいだけ食べて飲みたいだけ飲んでも薬を飲めば大丈夫というわけにはいきません。 食餌療法・運動療法が基本ですと言うのは簡単ですが実行し続けることはなかなか難しいものです。
ドライアイの悪化の原因として「コンタクトレンズ」「エアコン」「パソコン」の3コンがよく言われています。 コンタクトレンズを装用し、エアコンの吹き出し口の下にあるデスクでパソコン業務を長時間こなす。 それに加えて休憩時間中にテレビやスマホを見ていると眼は休ませてもらえるどころか、せっかくの休憩時間なのにさらに過酷な作業を強いられ続けます。 テレビ、パソコン、スマホを見ているときはまばたきの回数が極端に減ってしまいます。 まばたきには、分泌された涙を目の表面にまんべんなく配るという大事な役割があるのですが、回数が減ると目の表面が乾く前に涙でうるおすということが難しくなります。 こんな生活習慣でドライアイにならないわけがありませんし、目の疲れ(眼精疲労)も重なってつらい症状が出てしまいます。
ドライアイの諸症状はご本人のライフスタイルに眼がつきあいきれなくなってきているサインです。 筋肉痛に湿布を貼ってもすぐには痛みが取れないのと同じように、ドライアイの症状が出てからあわてて目薬をさしてもすぐには良くなりません。 良いコンディションを持続できるように症状のない時から、眼を休めるきっかけ作りとして目薬を利用してみてください。 それに加えて、蒸しタオルの目の上にのせて休憩する、あるいは少しの間仮眠をとるというのもリフレッシュに有効です。 とにかくこまめに眼を休めるというのが最大の対処法です。 テレビのコマーシャル中は目を閉じたり、番組が変わる間はいったんテレビを消したりなどの工夫も良いでしょう。 パソコンも専用眼鏡を売っていてそれなりの効果はありますが、その前にパソコン画面の輝度や位置の調整などから始めてみて下さい。
仕事するにしても趣味を楽しむにしても目を酷使せざるを得ない機会が本当に増えています。 治療を頑張ってもすぐに効果が出ないのは糖尿病などの生活習慣病と同じですが、出来るところから少しずつ眼をいたわる生活習慣へと工夫してみて下さい。