コラム集 自動車運転免許 2018.07
自動車運転免許の取得条件は 眼科領域では両目で矯正0.7以上かつ片目で0.3以上、もしくは片目が0.3以下の場合は他眼の視力が0.7以上で視野が左右150度以上です。 高齢者の免許更新時には視野検査があるようですが、原則として両目の視力が良好な場合は視野障害があるかどうかは条件に入っていません。 ただ、視力が良くても視野が狭いと周囲の道路交通状況がきちんと把握することができず、事故の原因となる可能性があります。
視野欠損が生じる代表的な病気は緑内障です。 残念ながら成人の中途失明原因疾患の1位となっている病気ですが、比較的末期までは視力は良好に保たれます。 視野欠損の場所や進行のパターンは個人差が大きく、上方の視野が見えにくくなると看板や信号を見落としやすくなり、 下方の視野が見えにくくなると歩行者の飛び出しに気づきにくくなります。 もちろん初期緑内障であればほとんど視野欠損を自覚することなく運転も原則支障をきたしません。 後期になっても視力が良好なため、大きな視野欠損があっても運転を続けられている方がいらっしゃいます。 大きな視野欠損がある進行した緑内障の方は健常者と比べて2倍以上事故を起こしやすいという報告があります。 そもそも眼科にかかる機会がなく、自分が緑内障患者だと気づかずに生活されている方がとても多いのです。
脳梗塞による同名半盲性視野障害も問題です。 例えば左同名半盲とは右目も左目も左側の同じ場所が見えない状態です。 そのため運転中は左から歩行者が道路に出てきても気づきにくいのです。 また右同名半盲だと両目とも右側の同じ場所が見えないため交差点で右折しようとすると対向車や右折先の横断歩行者に気づきにくくなります。
警察庁は専門家を交えて免許更新時の視野検査を導入すべきか、導入するならどこで免許停止の線引きをするかなどの研究が行われています。 ただ、郊外では自動車が生活の足として必需品となっており、 運転免許返上すると家に閉じこもりがちになり、うつや認知症のきっかけになることがあるといわれています。 また、視野障害があることを自覚しているドライバーは運転に慎重で事故を起こしにくいという報告も一方ではあります。 どの程度の視野欠損まで運転を許可するかを画一的に線引きするは難しいと思いますが、視野検査も免許更新の検査項目に入れていいと私は思っています。
最後に、健常者の方もコラム「非注意性盲目」をみていただき、安全運転を心がけてください。