オーダーメード治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集  緑内障点眼アドヒアレンス 2012.05

アドヒアランスとは患者さんが積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けることを意味します。 点眼アドヒアランスといえば、点眼の必要性を理解し、毎日規則正しく行うことになります。日本語に直すと点眼習慣とでもいうのでしょうか。 何でもかんでも意味のよくわからないカタカナ英語で表現するのではなく、日本語で適切な訳語をつけてもらいたいものです。 それはともかくとして緑内障点眼はなかなか忘れずにきっちりさすというのは難しいようです。

緑内障点眼薬は眼圧を下げるための目薬ですが、眼圧は自分で測ることができないため血圧とは違いその効果を数値として日々実感していただくというわけにはいきません。 また緑内障は基本的にはごく一部を除いて慢性疾患なので症状の急激な変化はありません。 その上に点眼薬の使用感があまり良くないことも多く、点眼しない方がかえって「自覚的には眼の調子が良い」という印象を持たれてしまうこともしばしばです。 出来るだけその方にあった点眼薬を処方するように努力はしているのですが、こうなってしまうと点眼習慣をきちっと継続していただくことが難しくなってしまいます。

放置すると失明にもつながりかねない病気なので良好な点眼アドヒアレンスはとても大切なことです。 そこで、緑内障患者さんがどのような点眼行動をされているのか、どうすれば点眼を規則正しくしていただけるのかを研究した論文がこれまでに多く発表されています。 点眼アドヒアランスが良好かどうかの線引きはそれぞれなのですが、最近発表されたものでは、1ヶ月間に点眼をしなかった回数が2回以下を良好、3回以上を不良として調査されています。 それによると

・ 点眼アドヒアランス不良患者さんは26.6%

・ 朝点眼での不良は18.2%、夜点眼では24.7%

・ 1剤点眼での不良は24.1%、2剤では27.1%、3剤以上では33.3%

4人に1人はアドヒアランス不良で、なかでも夜に点眼するのが忘れやすいという結果になっていました。 点眼薬数が多くなるほどアドヒアランス不良になりやすいのは点眼回数が増えるためと思います。

また、アドヒアランス不良になる原因として頻度が高かったものとしては 点眼薬が切れてしまった、忙しい、物忘れ、入浴、寝てしまう、動機づけ、旅行・出張などがあげられていました。 私が多いのではと思っていた、費用、副作用、飲酒などはあまり原因としてあがっていませんでした。

患者さんの立場から言うと「月3回忘れるぐらいで不良と言われるのか」という感じかもしれませんが、 もし点眼が「夜は忘れがちになるが、朝ならちゃんとさせる」という方であれば、私は夜にさすように指示されている点眼薬でも朝に規則正しくさしていただく方が良いと思っています。

この結果は患者さんとして通院してくださっている方々を対象としているため、途中で治療を中断してしまわれた方々は入っていません。 それを考えるともっとアドヒアランスの不良は深刻なものなのかもしれません。私たちも患者さんの点眼アドヒアランス向上のため、今まで以上にひとりひとりの患者さんにあったオーダーメイド治療を心がけて参ります。


緑内障点眼でよく聞かれるのが「夜(朝)さし忘れたのを次の日の朝(夜)に気がついたらさした方が良いですか?」というものです。 基本的にはさしてもらった方が良いと思いますが、次回点眼と数時間しかあいていないようなときに気づいたときは、そのときにさして次回点眼をとばしていただいて結構です。

もう一つが「さしたかどうかわからなくなってしまったときにはさした方が良いのでしょうか?それともそのままささない方が良いのでしょうか?」という質問です。 これは2回さすことになってもさしてもらった方が無難だと思います。

いよいよ金環日食が21日にあります。安全に観察していただきますようお願いします。