オーダーメード治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集 閉塞隅角緑内障に使用制限のある薬

薬局で市販薬を購入しようとしたり、他科から薬を処方されたりするときに、緑内障で治療を受けていないかどうか聞かれたことはありませんか?

緑内障は大きく開放隅角緑内障(OAG)と閉塞隅角緑内障(ACG)に分けることができ、患者さんの多くはOAGです。 これらの薬を使えないのはACGの方で、服用により眼圧が高くなって緑内障が悪化してしまったり、ひどいときには急性緑内障発作を起こし、救急対応が必要になることがあるからです。 まずOAGとACGの違いについてお話します。

隅角というのは目の中にたまっている水(房水といいます)が目の外に出て行くいわば排水口に当たるところです(図1、図2矢印)。 ここが広く開いている状態を開放隅角といい、排水口が狭かったりふさがっているような状態をそれぞれ狭隅角、閉塞隅角といいます。 閉塞隅角緑内障は基本的には眼圧(=目の内圧)に依存する病態です。 隅角からの排水能力が低下して房水がたまりすぎると空気を入れすぎたボールのように内圧すなわち眼圧が上昇してしまい、それが長期にわたると緑内障性変化が出てくるというものです。 そのためこのタイプの緑内障では隅角検査が重要になります。 ACGが疑われる場合には当院でも通常の隅角検査を行います。その結果、精密検査が必要だと判断した場合は大病院に超音波生体顕微鏡検査(UBM)や暗室うつむき検査(PPT)を依頼しています。

UBMとは超音波を使って隅角の形状を測定する装置です。通常の隅角検査では見えないところやよくわからない細かい部分まで検査することができます。 図2は同じ人の白内障手術の術前後のUBMです。矢印の先が隅角になりますが、術前は狭隅角、術後は開放隅角の状態です。 PPTとは文字通り暗室で1時間うつむき続けてもらう検査です。 散瞳(暗いところでは瞳が大きく開く)とうつむきという隅角が狭くなる2つのストレスをかけて検査します。 うつむく前後で眼圧を測定して、どれぐらい測定値に差があるかを調べます。 正常ではうつむいた前後で大きくは変動しないのですが、隅角が狭く排水能力に余力のない人はPPT後で眼圧が上昇してしまいます。

先ほどの薬の話に戻ります。

使用に注意が必要な薬は医師の処方箋が必要な、睡眠薬としても使用されている抗不安薬、抗うつ薬、排尿障害治療薬、パーキンソン病治療薬などに加え、 市販薬でも風邪薬、花粉症などのアレルギー治療薬など多くの方が気軽に使っておられるものも含まれています。 これらの薬の多くには、抗コリン作用を持つ成分が入っています。 内服するとこの作用ですこし散瞳するため、隅角をさらに狭くして眼圧上昇を引き起こしてしまうリスクがあるのです。 ACGは年配で遠視の女性に多いといわれています。緑内障の中でも多数を占めるタイプではありませんが、気になる方はチェックを受けることをお勧めします。