コラム集 糖尿病と網膜症 2007.10
糖尿病の患者さんは本当に増えてきました。それに伴って糖尿病網膜症を発症し眼科でしっかりと管理していかなくてはならない患者さんも多くなりました。網膜というのはカメラでいうとフィルムに当たる組織で、目の奥(眼底)に張り付いています。糖尿病網膜症は網膜の小さな血管の流れが悪くなり、栄養とか酸素がうまく運べなくなって起こります。
最初のうちは血管瘤(血管の小さなたんこぶ)ができたり、点状に出血したりするのですが自覚症状はありません。そのうち病気が進行してくると栄養や酸素が足りないため網膜の腫れが強くなったり、大きな出血を引き起こしたりして視力が低下してしまいます。さらに進行すると新生血管(急ごしらえの粗悪な血管)が出てきたり、目の中に膜が張ってきて網膜をしわくちゃにしたり網膜はく離を起こしたりします。最終的には失明にもつながりかねない病気なのです。
この糖尿病網膜症は糖尿病発症時から出てくることはなく5-10年して出てくることが多いといわれています。もちろん、糖尿病自体の発見が遅れた場合には初診時に網膜症を合併しているケースはありますが、最近では比較的まれになってきました。糖尿病が見つかると内科の先生から「眼底検査を受けてください。」といわれるはずです。そこで受診していただけるといいのですが、自覚症状がないためか定期検査を受けていただける方があまり多くありません。糖尿病といわれた方はその軽い重いにかかわらず必ず定期検査(網膜症がなければ半年から年に一回で結構です)を受けてください。
ちなみに網膜症がないからといって糖尿病がないという証明にはまったくなりませんので念のため。「自覚症状と病期」の項も是非ご覧になってください。