オーダーメード治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集  非注意性盲目 2012.07

私たちは生活の多くの部分を視覚に頼っています。では私たちの視覚情報処理はビデオカメラで録画するのと同じことでしょうか? つまり目の前にある風景や動きをすべてとらえて意識しているのでしょうか?その答えは「No」です。 人間の脳で処理できる情報量には限りがあるため、視覚から得られる情報を必要に応じて取捨選択して生活しています。


たとえば、マジックのトリックのいくつかにはこの「選択的注意」という特性が利用されています。 つまり、人が同時に注意を向けられる対象はそれほど多くないため、トリックを見破るための重要な視覚情報が意図的に操作され隠されていても、あたかも見て感じているものがすべてのような思いこみを引き起こすのです。

YouTubeから「選択的注意」に関する動画をお見せします。 白い服を着たチームのパスの回数をしっかり数えてください。最後までしっかり数え終えてから次に進んでください。

(・・・・とこれを書いたときにはyoutubeのビデオを引用したのですが今はリンクが切れているようです@2014ホームページ更新時)

これは有名な動画で、パスの回数を集中して数えているとゴリラが登場しても気付かないというものです。 この動画ではさらに背景色と黒を着たチームの人数が変わってしまっています。私もゴリラのことは知っていたのでわかっていましたが、この2点は全く気づきませんでした。白のチームのパス回数を「選択的に注意して」数えている間は、数えること自体が視覚情報処理のほとんどすべてになってしまっているのです。

このように、選んだ対象に注意が向いてしまうとその周囲に起こっている変化や動きに対する印象が薄く、それに対する反応が出来なくなったり遅れたりします。これを「選択的注意」と関連する概念として「非注意性盲目」と呼ばれています。文字通り「見えていない」ことに主眼を置いた概念です。 注意の対象が聴覚や触覚など視覚以外でも当てはまるのですが、この「非注意性盲目」が交通事故との関連で問題になっています。

自動車の運転中に携帯電話を使用していると追突や歩行者に気づかずにはねるといった事故を起こしやすくなることは知られています。 ハンズフリーなら大丈夫だと思っている方もおられると思いますが、携帯電話を使用しながら運転するとハンズフリーであろうとなかろうと事故を起こしやすいのです。 その一方でラジオを聞いたり同乗者と会話したりというのはあまり影響しないそうです。 つまり、運転が主で聞き流すことが出来る会話やラジオ番組を楽しむ状況と、ややもすると運転より携帯電話の操作や会話に気をとられてしまう状況とでは、同じようなことをしているにもかかわらず「非注意性盲目」に陥っているかどうかが違ってくるのです。 また、携帯電話使用中は道路周囲の看板や広告の内容を通常運転するときに比べてあまり覚えておらず、道路標識の見落としにもつながりかねないという結果も出ています。もちろん携帯操作中の脇見運転は論外です。くれぐれも運転中の携帯電話使用はお控えください。

さらに、これまであまり取り上げられてこなかったヘッドホンを装用している歩行者の交通事故リスクについてのレポートがでました。 ヘッドホンをつけて音楽などを聴きながら町中を歩いている人が交通事故に遭う頻度が2004年から2011年にかけて3倍に増えたそうです。単純にクラクションや警報に気づかないだけではなく、音楽を聴くことに集中して、視覚情報に注意を払うことが出来ない「非注意性盲目」の状態が問題になっているようです。

ヘッドホンをしながらジョギングしている方や自転車通勤されている方をよく見かけますが、危ないので「走る」か「聞く」かどちらかにした方が良いと思います。