オーダーメード治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集  薬の注意書きにある「緑内障の方は医師と相談を」とは? 2013.08

緑内障患者さんからの質問で

・薬局で風邪薬を買おうと思ったら「緑内障治療をしているなら主治医と相談してから来てください。」と言われた。

・内科で治療を受けていて、緑内障があると言ったら薬が変更・中止になった。

・胃カメラの検査を受ける前に「緑内障はありませんか?」と質問され、「ある」と答えると薬が変わった。

など薬の服用に関するものをしばしば受けます。市販薬や処方薬の中には「緑内障の方は医師と相談を」といった注意書きが書かれているものがあります。 その種類も、風邪薬、アレルギー用薬、パーキンソン病薬、排尿障害治療薬、抗うつ剤、抗不安薬など多岐にわたります。これはどういうことでしょうか?

この注意書きは緑内障すべてに当てはまるわけではなく、閉塞隅角緑内障の方に対してのみが対象となります。 これらの薬には抗コリン作用を持つ成分が含まれており、その作用の1つに隅角を狭くするというものがあるためです。 隅角が閉塞~狭くなっているのが原因で生じている閉塞隅角緑内障に対して、さらに隅角を狭くしてしまうことで病状を悪化させてしまう可能性があるのです。 隅角や閉塞隅角緑内障については以前のコラム(隅角と緑内障)で解説しておりますので詳しくはそちらをご覧下さい。

この作用がどれぐらいの強さで出てくるかは人それぞれです。全く変わらない人もいらっしゃれば影響が強く出る方もいらっしゃいます。 ひどい場合は急性緑内障発作(コラム「急性隅角閉塞症(急性緑内障発作)」をご覧ください)を起こしてしまうことも考えられます。 当院にかかっておられる方で、閉塞隅角緑内障の方には注意書きをよく読んでいただくよう必ずお伝えしておりますし、ハイリスクの方には隅角の閉塞を解除するレーザー治療や手術を勧めることがあります。

緑内障患者さんの中で一番多いのが正常眼圧緑内障をはじめとする開放隅角緑内障で、閉塞隅角緑内障の方は一割前後です。 したがって、多くの緑内障患者さんにはこの注意書きを気にしていただく必要がありません。

抗コリン作用のある薬は閉塞隅角緑内障でない方々には、ほとんどの場合使用に問題はありません。ただ、ご自身の目が閉塞隅角緑内障であることあるいは隅角が狭くて閉塞隅角緑内障を発症しやすいことを知らずに生活されている方々がおられます。 閉塞隅角緑内障では使用してはならない薬ですし、緑内障にはなっていないが、隅角が閉塞あるいはきわめて狭くなっている方もこのお薬で緑内障特に急性原発性隅角閉塞症(急性緑内障発作)が起こる可能性があります。狭隅角はアジア人に多くその中でも女性、遠視眼、高齢者に多いとされています。当院でも白内障など別の病気で経過を見させていただいている方で、年齢とともに少しずつ隅角が狭くなったためにこれら薬剤の使用制限をしたり、中央市民病院で精密検査を受けていただいたりする方がときどきいらっしゃいます。このように緑内障以外の病気であっても眼科にかかっている方なら眼科医がチェックできます。 しかし多くの眼科にかかっていない方の中で、場合によっては使用してはいけない方が使用してしまっているケースも考えられるのではないかと危惧しております。

全員に眼科受診を勧めるわけにはいきませんが、隅角のチェックは通常の検診や人間ドックの検査項目には入っていません。 ひょっとしたらと気になる方や遠視の強いご高齢のかたなどは念のためのチェックを受けてみてはいかがでしょうか?

あとひとつ抗コリン作用による気になる眼の症状としてかすみ目があります。ピントを合わせる能力が低下するためで、特に運転には注意が必要です。 薬を飲み始めてからかすみ目を感じることが増えた人は薬の副作用も可能性として考えてみてください。