オーダーメード治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集 視神経症 2015.07

視神経はフィルム(網膜)に写っている画像を現像所(脳)へ情報伝達するパイプラインのような役割を果たしています。 診察するときはその出口にあたる視神経乳頭という場所を観察することができます(図1)。 ここが腫れたり萎縮していたりなど病気のサインが出ていれば要注意です。 もちろん脳に近いところのトラブルは目の中をのぞいただけではわからないことも多く、MRIなど脳に近い部分をチェックするための画像診断が必要になることもあります。 視神経におこっているトラブルの原因が炎症なら視神経炎、虚血や圧迫など炎症以外なら視神経症と呼ばれています。

ちなみに、これまで何度かコラムでも紹介してきた緑内障が視神経のトラブルとしては代表的なものです。 最近では緑内障性視神経症というのが正式名称になっており視神経症の一つとして考えられています。 一般的に緑内障は慢性に変化する病気で視力障害はある程度進行した時期におこりますが、 それ以外の視神経症・視神経炎は多くの場合、比較的急激に症状が進行し、早い時期から視力障害を引き起こします。

その中でも進行が速いのは虚血性視神経症でしょう。視神経にある毛細血管がつまり、視神経に栄養や酸素が供給がされなくなることが原因で起こる病気です。 このような状況下では当然情報伝達を正常に行えず、数時間~数日のうちにいろいろな程度の視野欠損や視力低下を自覚するようになります。 いくつかの治療法がこれまでも試みられたのですが、この視神経症に対する有効な治療法がいまだ見つかっておりません。 予後も残念ながら完全に回復する人は少数で、何らかの後遺症が残る場合が多数です。 これは脳の血管がつまる脳梗塞も同じで、虚血性視神経症を発症した方は脳梗塞を将来起こすリスクも高いといわれています。 糖尿病・高血圧・高脂血症などの血管にストレスがかかるような病気を抱えている方は、更なる虚血がおこらないようにしっかりと管理しないといけません。

ほかに時々遭遇する疾患としては圧迫性視神経症や鼻性視神経症などがあります。 これらは虚血性ほど急激な変化を起こすことはほとんどありませんが、週~月の単位で悪化することがあります。 圧迫性視神経症は目から出た視神経が脳の現像所にたどり着くまえに腫瘍や動脈瘤などの圧迫により障害される病気です。 鼻性視神経症は副鼻腔にあるトラブル特に腫瘍性のトラブルにより視神経が障害される病気です。 両者とも早期発見早期治療ができれば視機能障害が残らず治癒することも珍しくありません。

これまでの話を見て、「私は緑内障性視神経症ではなくてほかの視神経症かもしれない。 MRIなどの画像検査を念のため受けたほうがいいのではないか?」と不安になった緑内障患者さんがおられるかもしれません。 眼底検査、視野検査、視力検査などいくつかの検査を組み合わせた経過観察を受けていただければ緑内障とそれ以外の視神経症を鑑別することはほとんどの方で可能です。 どちらか判断しかねる微妙な方には念のためMRI検査をお願いすることがまれにありますが、 すべての緑内障患者さんにMRIなどの頭部画像検査を受けていただく必要はまったくありません。念のため申し上げておきます。

視神経症と並んでもう一つのトラブルである視神経炎についてはまた改めてご紹介しようと思います。