オーダーメード治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集  眼科今昔物語 黄斑部疾患編

眼球模式図

黄斑部とはフィルムに当たる網膜という組織のど真ん中、つまり自分が見つめているところが写っている一番重要なエリアを指します(上図)。黄斑疾患とひとまとめにしましたが、黄斑変性症、黄斑円孔、黄斑上膜などいくつかの病気があります。

私が眼科医になった20年前ぐらいはいずれも基本的には見守ることしかできない病気でした。当時にも硝子体手術という目の中の組織に対する手術法がありました。しかし網膜剥離の一部の症例、糖尿病網膜症の硝子体出血などに用いられるだけで、目の中でもっともデリケートな黄斑部に対して積極的にアプローチするには技術的にも器機的にも困難でした。その後新しい手技や器機の開発がどんどん行われ、硝子体手術は劇的(と私は思ってます)に進歩しました。

黄斑円孔というのは黄斑部に丸く穴が開いてしまっている状態です。フィルムのど真ん中に穴が開いているわけですから、視力は低下して見たいところが見えなくなってしまいます。そこで硝子体手術を行い、黄斑部に穴を開けた原因を取り除き穴が閉鎖する環境を整えてやります。閉鎖率も90%前後で視力回復も望めるようになりました。

黄斑上膜はその名の通り、黄斑部の上に薄い膜が張ってくる病気です。膜が張っているだけで視力が良く、変視症(ものがゆがんで見える)もなければ放置してもかまいません。そういう方のほうが多いのですが、中には膜が分厚くなったりしわができるようになったりすると視力低下や変視症を訴えるようになる方がいらっしゃいます。そうなると硝子体手術で張っている膜を取り除き、視力回復あるいは変視症の解消を目指します。

黄斑変性症は最近失明原因の上位を占める病気になってきました。数年前までは手術療法を用いることもあったのですが、最近では手術療法に取って代わり光線力学療法や抗VEGF抗体の硝子体注入療法が主流になっています。黄斑変性症に関しては視力低下を何とか食い止めるあるいは進行をできるだけ緩やかにすることが治療の目的で、残念ながら積極的に視力回復を図るというところまでには至っていません。最近の治療法など詳しくは別のコラムでお話ししようと思います。