オーダーメード治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集 アンチドーピングと目薬 2016.04

最近ロシアのスポーツ選手が国ぐるみでドーピングを行っていると報道されました。 有名なロシア出身のテニス選手も最近使用禁止になった薬物を使用しつづけたと問題になっています。 ことの真偽はともかく本人は使用禁止になったことを知らなかったといっています。

私はスポーツドクターではないので、正直なところ局所投与の点眼薬でドーピング検査のときに問題になるようなものはないだろうと 甘く見ていたのですがどうもそうではないようです。 最新のドーピング検査はものすごく鋭敏な検査なので、使用禁止薬剤を含む点眼剤をさすだけで陽性反応が出ることがあるそうです。 ただ、そうはいっても内服では禁止されているステロイドや利尿剤も点眼薬としては使用を認められています。 ステロイド点眼薬は花粉症治療などでも使用しますし、利尿剤の点眼薬は緑内障治療薬として一般的に使われています。 もちろん点眼液で治療していることをあらかじめ申告しておかなければなりません。

アーチェリーや射撃などの競技ではβ遮断薬といわれるカテゴリーの薬は内服のみならず点眼薬といえども使用を認められていません。 もともとは高血圧の治療に用いる内服薬でしたが、点眼薬として開発されたものは緑内障治療薬として広く用いられています。 このβ遮断薬は結膜などから吸収されたごく微量でも、全身的な作用が出ることがあり、 この薬を使ってはいけない病気に対してはたとえ点眼薬でも使用できません。 血圧や脈拍数を下げ、緊張や動悸で手が震えにくくする作用があるため、目薬で吸収されたごくわずかな濃度でも、競技成績に影響するのかもしれません。

市販されている疲れ目や結膜炎用の点眼薬には特に制限はないようです。 ただ、日本体育協会のホームページで使用可能と推奨されているのは血管収縮剤を含まないものばかりでした。 この成分は目の充血をとる目的で添加されていて、内服などの全身投与では競技会時には使用禁止になっています。 この成分を含む目薬を過度に使用すると陽性反応が出る可能性があるようです。

風邪薬一つとってもすべてが使用可能というわけではないようで、学生陸上競技連合のホームページにはどの市販薬が使えるのか、 どの市販薬が禁止されているのか、事細かく掲載されています。 常に最新の使用禁止薬剤情報に基づいて行動しなければならず本当に大変です。 我々も選手の足を引っ張らないよう常に気を付けなければと思いを新たにしました。