オーダーメード治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集  眼科今昔物語 白内障編 2010.01

ご高齢のすべての方に白内障は出てきます。カメラのレンズに当たる水晶体が濁ってきて見えにくくなる病気です。もちろん程度に差があるので壮年期から手術を考えないといけない人からご高齢になっても手術を受けていただかなくても済む方までいらっしゃいます。昔は眼内レンズがなく、手術後は強い遠視の入ったメガネをかけていただいていました。弱い拡大鏡をかけているような感じになるので、ものが大きく見える・レンズが重くてかけづらいなど不便な状況でした。手術も傷が大きく、術後は砂のうで頭を数日固定することがあるなど患者さんに大変不自由をおかけするような時代でした。

私が医師になった約20年前になると、眼内レンズが使用されており、手術後にこれまでのような度の強いメガネをかけていただかなくてもいいようになっていました。また、この時期には大きな術創より水晶体をそのまま摘出する手術から、小さな術創より水晶体を超音波で細かく砕いて摘出する方法へ移行する時期でした。手術時間の短縮、術後視力の早期回復、術後乱視の軽減など手術を受けていただく患者さんの負担もかなり軽減されました。

その後もどんどん手術方法は改善され、患者さんによりご満足いただけるようにそしてなによりも安心して受けていただけるようになりました。また、最近はよりよい視力が必要な機会も多くなったため、以前と比べ早い時期から白内障手術を勧めることも増えてきました。

ただ、目の状態によっては最新の術式で手術を受けられないこともありますし、白内障以外に視力低下の原因をお持ちの方(たとえば黄斑変性症、緑内障、糖尿病網膜症など)は、手術を受けていただいてもご期待通りの視力回復が得られないことがあります。また、安全性の高い手術にはなっておりますが、残念ながら合併症などの問題点が皆無となったわけではありません。

最近のトピックスとしては多焦点眼内レンズの登場です。このレンズは健康保険が効かないため手術代を含めてすべて自費になります。多焦点と名付けられてはいますが、正確には遠くと近くの2点に焦点が合うレンズです。手術を行っている病院は限られており、多焦点眼内レンズもこれまでの単焦点眼内レンズに比べて一長一短があります。当院では手術を行っている病院の紹介などのご相談は承りますが、詳しくは手術を行っている病院で説明を受けていただきますようお願い申し上げます。