テーラーメイド治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集 サプリメントに対する私見 2018.08

過去のコラム「さんた論法」でも少し触れましたが、サプリメントの広告は見ない日がないぐらい巷に溢れています。 本当にサプリメントは効くのでしょうか?

「加齢黄斑変性症(AMD)に対して高容量の亜鉛と抗酸化サプリメントの組み合わせは有効か?」という大規模試験があります 。2つの大きな試験があるのですが、最初は抗酸化サプリメントとしてβカロテンが含まれていました。 ただ、βカロテンの高容量の摂取は喫煙者に肺がんができるリスクを高めてしまうという指摘や、 亜鉛の過剰摂取で消化器や腎機能に悪影響が出るという指摘から、βカロテンの代わりにルテインなどの別の抗酸化物質での効果を検討しました。 亜鉛はそのままの量で再度試験を行いました。 結果は初期のAMDには効果はないが、中等度のAMDなどで進行を遅らせることができるとわかりました。 ちなみに下で出てくるn-3脂肪酸サプリメントも試験されていたのですが、こちらのほうは残念ながら効果ありませんでした。 この試験結果を踏まえ、日本眼科学会でも治療指針としてルテインを含むこの組成のサプリメント摂取をAMD患者さんに推奨しています。

最近、大変権威のある雑誌に「ドライアイ治療にn-3脂肪酸サプリメントは有効か?」という大規模試験の結果が掲載されました。 残念ながら有効性は認められませんでした。n-3脂肪酸はエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)が使用され、 それを毎日3000㎎摂取するサプリメント群とプラセボを摂取するプラセボ群で比較を行ったそうです。 プラセボとは薬に似せて作ってあるが有効成分が入ってないものをいい、今回はオリーブオイルがn-3脂肪酸の代わりに使われました。 私がこの試験で面白いと思ったのは、ドライアイ主要評価項目でサプリメント群と同じ割合でプラセボ群が試験開始時に比べ同じぐらいの改善を示したことです。 つまり、「ドライアイにいいサプリメントを飲んでいると思い込むだけで、ドライアイの症状が改善された」方々が、サプリメントを飲んだ方々と同じぐらいいたということになります。

「サプリメントを飲み続けてこんなに健康になりました!」という体験談をコマーシャルでよく見ますが、こんなことがあることも知っておいてください。 それに加え、「ほかより高濃度」「ほかに比べてx倍の含有量」などとの広告を見ますが、成分によっては過剰摂取は健康を害する危険があります。


有効性が示されたサプリメントに関しては推奨できますが、信頼できる試験で有効であると認められたサプリメントは残念ながらほとんどありません。 「飽食の日本において、健康管理で気を付けることは栄養不足ではなくて運動不足である。」です。